有名な作家になると「全集」があったりします。
全集とはなにか、一言で言うと、
その作家の書いた全ての作品を収録している本です。
「全ての作品」とは、その作家の小説・エッセイ・戯曲・友達に宛てて書いた手紙・断片的な文章など、ほんとにぜんぶです。
よほど好きな作家じゃない限り、全集なんて読んでられんわ
まあ確かに、全集を読むのはたいへんな作業です。めっちゃ疲れます。
ただ、全集を隅から隅まで読んで、初めて得られるものもありますよ。
今回は、全集を読むメリットを4つ紹介します!
全集を読むメリット
僕が思う、全集を読むメリットは4つです。
どれも、超大事。
①その作家を堂々と語る資格ができる
全集とは、その作家の文筆活動の集大成みたいなもんですから、
全集をすべて読めば、その作家のかなり深い理解者になれます。
その作家の文庫本を何冊か読んだくらいで、その作家を語るのはちょっと気がひけますが、全集を読破したとなれば、友達の間でも堂々と語れます。
(好きな作家の話をできる友達を持つことは、幸福に直結します)
そもそも全集を読む人なんて、ほぼいません。
いま、リアルタイムで全集を読んでいる人なんて、日本で数人かもしれません。
全集を読破すれば、あなたがその作家の代表的な読者になれるのです。
②作家の恥ずかしい失敗作も読める
「全集には、その作家のすべての作品が収録されている」とさきほど言いました。
実は、
「すべて」=失敗作も含みます。
その作家が「うわ、超つまんない作品書いちゃったよ。封印しよ」みたいな失敗作も、逃さずに収録されています。
たとえば──
江戸川乱歩は『悪霊』という推理小説を連載していたのですが、なんと、途中で「続きの展開考えるのしんどくなったから、書くのやめます」と言って、
突然、休載しちゃったんです。
冨樫仕事しろ
掲載していた雑誌にとっては、最悪のイメージダウンになりますし、なにより作家にとって作品の連載を途中で投げだすというのは重罪です。
そんな江戸川乱歩最悪の失敗作である『悪霊』も、全集にはきっちり収録されています。
連載を休載するにあたって、江戸川乱歩が書いた「言い訳」がおもしろいので、ぜひ「江戸川乱歩全集第8巻」を読んでみてください。
作家の失敗作も含めて読むことで、「作家も泥くさい人間なんだな」ということが分かります。
夏目漱石だって全集を読むと、初期の作品なんて失敗作ばっかりですからね。
ただ、おもしろいことに、失敗作だからこそ、その作家の考えや思想がストレートに出ていたりするのです。
全集を読む=作家の恥ずかしい裸の姿を見ることです。
③作家の成長を体感できる
全集は、基本的に1巻から時系列順にのっています。
「最初に発表した作品〜最後に書いた作品」の順番でのっているわけですね。
つまり、1巻から順番に読んでいくと、作家の文章の成長を体感しながら読めるのです。
これは意外と大事なことで、「うまい文章の書き方」っていうのがわかってくるんですよ。
「あ、この時期から一気に文章がうまくなったな」っていうのが、体感でわかるんです。
たとえば──
夏目漱石だと、初期の作品は登場人物の描き分けが甘くて、誰がしゃべっているのかよくわからなくなるのですが、
だんだん登場人物ごとの描き分けがうまくなっているのが、わかります。
まだ未熟な作家が、プロの作家になっていく過程を追える
文章をうまく書きたい人にとって、全集を順番に読むのはまちがいなくプラスになります。
これは約束します!
将来、モノを書くことで少しでも稼ぎたいと思うなら、
全集を読むのは必須だと思います。
④自信がつく=脳の筋トレになる
全集というのは、とにかく量が多いです。
全集を最後まで読めれば、それはかなりすごい達成なので、自信を持っていいはずです。
そして、必ず思うはず。
全集に比べたら、ふだん読んでた文庫本なんてレベル1やん!
そう、全集を読むと、文庫本くらいの厚さの本を読むのなんて楽勝になります。
速読を肯定するわけではないですが、全集を読むと、まちがいなく本を読むスピードはアップします。
かなり大幅にアップしますよ。
全集を読むことで、一気に他の本を読む難易度が下がる、と僕は思います。
全集読めば、他の本も楽勝で読めるようになる!
全集を読むメリットまとめ
まとめます。
①その作家の代表的読者になれる
②失敗作も含めて読める
③作家の成長を追える
④他の本を読むのが楽勝になる
──どれも、この先、読書を続けていくにあたって、大事なメリットばっかやん!
もう、これは、全集読むしかないです。
全集を読む前の注意点
単に「全集」と言っても、注意すべき点が2つあります。
①全集とはいえ収録されていないものもある
全集=その作家のすべての作品が収録されている
──と何度も言いましたが、全集の編集方針によっては、そうでないこともあります。
たとえば━━
「大江健三郎全小説」は、なんか全集っぽい感じの本ですが、
「全集」ではなく「全小説」と書いてあるように、小説のみを集めたシリーズです。
小説以外のエッセイなどは、読めません。
一口に全集と言っても、その全集を編集する人はそれぞれちがいます。
編集方針によっては、「全集」と言いつつも、一部収録されていないものもあったりしますので、注意。
その全集の内容を知りたい場合
「〇〇全集 目録」などでググると、目次が出てきますのでそれを参考にしましょう。
②作家の生前に刊行された全集は注意
全集は基本的に、大物の作家が亡くなった後に刊行されるものですが……。
中には、作家がまだ生きているうちに刊行されるものもあります。
例えば━━
筒井康隆全集は、筒井康隆がまだバリバリ生きている時に刊行されています。
なので、筒井康隆の作品を途中までしか収録できていません。
全集と書かれていても、その後作家が新作をバンバン書き始めると、もはや全集ではなくなってしまうので注意。
おすすめ全集の選び方
全集をえらぶ際の注意点は2つだけです!
少ない巻数の全集
自分が心から好きな作家の全集
──これだけです。
安部公房の全集は、全30巻と大ボリュームなので、へたに手を出さない方がいい。(僕も途中で挫折しました)
やはり、最初に読むべきは巻数の少ない全集がいい。
梶井基次郎全集なんかは、文庫本でたった1巻だけです!
梶井基次郎は若くして死んでるから、作品数が少ないのです。
たった一巻だけなら読めそうでしょ?
他にも、中島敦全集なんかも全3巻なので、かなり読みやすそうですね。
もちろん、たった3巻でも興味のない作家だと読むのがつらいと思うので、
なんとか「巻数が少ない+好きな作家」という黄金の条件を満たしている作家を、がんばって探しましょう!
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