ビジネス書や自己啓発本を読む人は意識が高い。
確かにそうなんだけど、自分に実力がないのにそういう本ばかり読んでいると、
ビジネス書や自己啓発本の読みすぎが不幸になるたった一つのわかりやすい原因を紹介しよう。
成功者ばかり見ると生存者バイアスにかかる
ビジネス書や自己啓発本の読みすぎが不幸になる原因は、
生存者バイアスとは、「勝ち残った人ばかりを見て、それが平均だと思ってしまう」こと。
例えば、イチローが「基本的な素振り練習を毎日欠かさずやれば、必ず野球選手になれる」と言っているのを聞いて、
──と思うのは、生存者バイアスのせいで生じる完全な間違いだ。
実際には、素振りだけでなく、千本ノック、走り込みなど猛烈な練習をしている野球選手でも、プロの世界から脱落してるのが現実。
スーパースター・イチローのアドバイスだけを盲信してしまうと、恐ろしいほどものの見方が偏ってしまう。
これがバイアス(偏り)と呼ばれるゆえん。
生存者バイアスにかかってしまうと、恐ろしい副作用が生まれる。
──と、自己肯定力がガタ落ちしてしまうのだ。
ビジネス書なんてものはだいたい、立派な経歴の人が勝ち組の視点から書いていることが多いから、遠回しに自分が負け組だと言われているようでストレスがたまる。
成功者の書く自己啓発本の内容はだいたい「俺はこうしたから宝くじに当たった。君も宝くじを買えば成功者になれる」という理屈で、いやあなたが成功したのは実力じゃなくて運が良かっただけでしょ、という反論に答えられない。
ちなみに俺の場合は、ビジネス書は読むけど自己啓発本は読まないようにしてる。
ビジネス書と自己啓発本の区別はむずかしいんだけど、簡単な見分け方はこの記事で解説済み。
たまには見下ろせ
今までの話を要約すると、
- 成功者ばかりを見るのは、「生存者バイアス」につながり、自己肯定力が下がってしまう。
- ビジネス書や自己啓発本を読みすぎると、「生存者バイアス」にかかってしまい、劣等感に苦しむ。
といっても、成功者を尊敬するのは大事だし、見習うところは見習わないといけない。
でも、成功者ばかり見ていると「生存者バイアス」に苦しめられる。
このジレンマを断ち切る簡単な方法がある。
立派じゃない人を見ることだ。
「上」ばかり見ていると生存者バイアスで苦しくなる。
なら、たまには「下」を見てみればいい。
日本が「一億総中流」というのは、成功者が自分に嫉妬が向かないようにでっちあげたウソで、実際には生まれた環境・学歴・遺伝子などによって身分が異なるれっきとした階級社会だ。
「上」ばかりを見て「生存者バイアス」に苦しむのはバカらしい。
たまには「下」を見て、安心する態度を俺は否定しない。
あなたより下の人間は必ずいる。
ホリエモンや孫正義、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク……
世界には勝ち組がごまんといて、彼らはエベレストの高みからあなたを見下ろしてくる。
でも、自分を否定しなくてもいい。
下を見ると、もっと低い位置にいる人もいて、低いように見えた自分が実は富士山くらいの高みにいることがわかったりもするのだ。
自分より低い人を見ないと、自分の高さはわからない。
人生、そんなもん。
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日本人作家だと、西村賢太さんの本がおすすめかもしれない。
彼の経歴をWikipediaで見ればわかるけど、とても立派とは言えないし、社会の下流を漂ってきた人間なのかもしれない。
彼のいちばん有名な小説は『苦役列車』で、彼の自分自身の人生をモデルにして書いたいわゆる「私小説」ってやつで、主人公がクズすぎておもしろい。
でも、こういうどうしようもない小説を読むと、どこか安心している自分を発見するはずだ。
「自分はまだマシだな」
━━そう思うことが悪いことだとは思わない。俺もよく思うから。
もう一つおすすめ本を紹介しておくと、これとかがいい。
『絶望名人カフカの人生論』。
カフカという外国の作家なんだけど、彼は超ネガティブでやることなすこと全部後ろ向き。
いちばん楽なのは、倒れたままでいることです。
──などのカフカのネガティブ発言がまとめられた本で、ポジティブでいることに疲れた人は読んでみると楽になる。
ずっとポジティブでいるのはムリだ。
たまにはじっくりと病んでみればいい。
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