鶴見済さんについては、著者の名前よりも『完全自殺マニュアル』という本のほうが有名かもしれません。
著者は1993年に『完全自殺マニュアル』を出版し、一気に有名になりました。
自殺の方法を詳細に紹介したこの本は賛否両論を呼び、「著者は悪魔だ」「これは自殺教唆だ。今すぐ出版停止にすべき」などの反対意見もあったそうです。
『完全自殺マニュアル』が飛び抜けて有名ですが、この記事ではそれ以外の鶴見済さんの著作も紹介していきます。
前期おすすめ本ランキング
まずは、1990年代に書かれた本を紹介します。
90年代に書かれた本は、タイトルも内容も犯罪スレスレの本ばかりです。
かなり刺激的なので、本に書かれている内容をすぐには実行しないほうがいいと思います。
完全自殺マニュアル
一時期、社会ブームになった本で、現代でも「禁書」として根強い人気があります。
90年代という世紀末の暗い雰囲気を物語るような本ですよね。
特に当時の若者からは絶賛されたそうですが、あまりにも具体的に自殺方法を紹介していることから、実際にこの本を読んで富士の樹海で自殺を遂げた人もいました。
批判の多い本書ですが、僕は楽しく読めました。
著者も言っていますが、
「自殺は絶対にダメだ」という意見はもっともかもしれませんが、だからといって自殺の方法を知るのを禁止にする必要はありません。
自殺という選択肢もある。痛くない死にかただってたくさんある。
それを知った上でどうしても死にたいというなら、はいどうぞ。
━━著者のスタンスは一貫していて、「死ぬな」とは一言も書かれていません。
日本には「死ぬ気で生きろ」的な体育会系でマッチョな言説ばかり飛び交いますが、別に誰もが一生懸命生きる必要はありません。
自殺という「逃げ」の選択肢があることで、むしろ生きやすくなる。
ぜひ、本書だけは読んでほしいですね。
読んだ後、あなたが本書のスタンスに「賛成」するか「反対」するか、とても気になります。
著者のTwitterより。
人格改造マニュアル
どれも実行するとやばいことになりそう。
『完全自殺マニュアル』に続いて、「楽に生きるには人格を改造するしかない!」ということで書かれたマニュアル本。
あなたの学校にも「陽キャ」と「陰キャ」がいたと思いますが、社会に出ると重宝がられるのは、圧倒的に「陽キャ」です。
「陽キャ」はそのままでいいのに、なぜ「陰キャ」は無理に「陽キャ」に合わせないといけないのでしょうか。
それはめんどくさい、ということで、本書ではあなたの人格を改造して楽に「陽キャ」に変身できる方法が紹介されています。
紹介されている人格改造法は、
・クスリ(覚醒剤・カフェイン・精神刺激剤・抗うつ剤・アルコール)
・洗脳(催眠暗示法、自己開発セミナー)
・サイコセラピー(認知療法、森田療法)
・電気ショック
・α波瞑想
──などです。
著者自身も体験済みのものが多く、経験者の視点から語られるので説得力が段違いです。
著者は、
気軽に精神病院に行って薬をもらおう。
━━と言っており、精神病院に行くことはまったく変なことではないと言っています。
やはり、覚醒剤の効果は別格らしく、クスリの王者らしいです。
覚醒剤にはたしかに依存症になるリスクもありますが、適度な量をキープすればむしろ最強のモチベーションUPになります。
実際に覚醒剤を適度に使用するおかげで、毎日の生産性が上がってむしろ幸福な生活をしている人も本書にはたくさん登場します。
「覚醒剤やめますか?それとも人間やめますか?」
━━というキャッチコピーがありましたが、これは行き過ぎかもしれません。
「覚醒剤=絶対やってはいけない」と考えるのはむしろ思考停止です。
覚醒剤については最近も議論が起こっていますが、すでに1990年代に指摘していた鶴見済さんは慧眼という他ありません。
他にも、自宅で電気ケーブルの銅線を剥いて、頭に電気ショックを与えると脳が再起動されてスッキリする、という方法がありましたが、さすがにこれは怖すぎますね。
『完全自殺マニュアル』に続いて、「マニュアル」の名に恥じぬ情報量なので、読んだらすぐに実行できます。
ただし、かなり前の本なので、情報はおそらく古くなっていますので、実行する場合は最新情報も合わせてチェックしましょう!
ちなみに、本書では「人格改造音楽」として、『Wake up Boo!』という音楽が紹介されています。
音楽は理性の力を弱らせて、本能に訴えてくるところがあるので、気軽に人格を改造したい時に便利です。
この音楽は単純な歌詞ですが、すぐに明るくなれるのでおすすめ。
ぜひ、本書のテーマソングとして聞いてみましょう。
鶴見済『人格改造マニュアル』
社会に出ると、学生時代の「陰キャ」よりも「陽キャ」の方が重宝される。「陽キャ」はそのままでいいのに、「陰キャ」は変わらないといけないのはおかしい。
ならクスリや自己暗示を使って、簡単に人格を変えようというのが本書。やばい本…https://t.co/9ENf5VRMTk
— タロン@本読み (@shin_taron) June 11, 2021
ぼくたちの「完全自殺マニュアル」
『完全自殺マニュアル』の番外編的な本ですが、反対意見も多いものの、若者からはおおむね好意的な感想が多かったようです。
本書を読んで自殺の決行日を宣言した手紙とかもありました。
他にも、
この本のお世話にはなりたくない
僕は死なないよ〜
私は生きているぜ!
著者の方の未来に地獄あれ
良かったけど本棚に置いておくと家族が心配するので古本屋に売ります
━━などの感想のお手紙が多数。
『完全自殺マニュアル』が出版された当時の衝撃度がよくわかる本です。
ところで著者のTwitterによると、『完全自殺マニュアル』が発売された93年と翌94年は、自殺率が減ったそうです。
自殺率はいろんな変数が絡んでくるので、『完全自殺マニュアル』だけが原因ではないでしょうが、興味深いデータですよね。
無気力製造工場
まだwindows95が登場する前なので、テレビ番組やマンガのレビューばかりで、インターネットには全く触れられていないところに、当時の時代を感じます。
基本的に著者が日常的に考えていることが書かれているのですが、やはり「自殺」についての文章が多めです。
僕がおもしろく読んだのは、「昭和の文豪はどうやって自殺したのか?」という章です。
三島由紀夫・太宰治・芥川龍之介・川端康成など、日本の文豪は自殺者ばかりですが、彼らの死に様を「自殺評論家」の著者の視点から論じているのがおもしろかった。
特に三島由紀夫のような自殺はかなり特殊ですし、太宰治は女と一緒じゃないと死ねない人らしいです。
ところで、昔の本って今よりも基準が甘かったのか、びっくりするような写真が載ってたりしますよね。
本書でも、女性のバラバラ死体が無修正で載っていたので驚きました。これから読む人は注意。
檻のなかのダンス
読みやすい。
実は鶴見済さんは、覚醒剤取締法違反の罪で逮捕されています。
著者が路上でイラン人から覚せい剤を買ったところ、張り込んでいた捜査員に逮捕されたそうです。
逮捕後、著者が体験した留置場暮らしのことが本書では書かれています。
本好きな著者のことなので、てっきり留置場では読書していたのかと思いましたが、無意味に体を動かしてダンスしていたそうです。
(それが『檻のなかのダンス』というタイトルの由来になっています)
さらに、著者の考えは発展して、「留置場だけでなく、学校も檻のようなものだ。この管理社会から逃れるには、ダンスしかない」というぶっ飛んだ結論に至っています。
留置場の話はおもしろかったのですが、後半のダンスの話は「まあ、留置場に長くいたら、変なことを突き詰めて考えてしまうよな」と思いましたし、僕は「へえ〜」くらいの感想だけで受けとめました。
レイヴ力
著者と音楽家による対談集です。
レイヴとは、「野外におけるダンスパーティー」のことですが、留置所を体験した著者がレイヴに行き着くまでのことも書かれています。
ただ、音楽についてのことも絡んでくるので、僕にはよくわからなかった。
音楽に興味のある人ならわかるんですかね。
後期おすすめ本ランキング
鶴見済さんのほとんどの本は1990年代に書かれており、2000年以降に書かれた本は少ないです。
しかも、2000年以降に書かれた本は、昔ほどのインパクトはない気がします。
鶴見済さんが90年代に書いた本はけっこう乱暴な言葉遣いがあって、怖かった(それがおもしろいのですが)ですが、最近の彼の本は「丸くなった」印象ですね。
脱資本主義宣言
鶴見済さんは、若い時期の大半を「生きづらさ」との格闘についやし、「がんばって生きる」という生き方から降りたそうです。
資本主義だと、「もう自分にとっては満足したから、これでいいや」は許されず、もっと稼ぐことを強制されます。
(経営者はどれだけ稼いでも、もっと稼ぐことを要求されます)
それに対して、鶴見済さんのような脱資本主義的な生き方なら、「自分にとってはこれで満足」が通用します。
(自分にとって必要な分だけ畑で食料を生産して、それ以上は生産しない)
マルクスも言ってましたけど、資本主義はブレーキが利かないのでいつか必ず大事故を起こします。
資本主義が破綻するXデーに備えて、脱資本主義的な生き方をしているのが鶴見済さんなのでしょう。
0円で生きる
資本主義から「逃げる」ための具体的な方法が書かれています。
資本主義から「脱」するには、具体的にどうしたらいいのか?
本書では、
・もらう
・共有する
・拾う
・稼ぐ
・助け合う
・行政からもらう
・自然界からもらう
━━という7つの具体的な方法が紹介されています。
僕としては、本書で紹介されていたWWOOF(ウーフ)というサービスが気になりました。
WWOOF(ウーフ)は、有機農場などで手伝いをする代わりに、宿泊と食事が無料になる、世界で最も有名なワーク・ エクスチェンジのネットワーク。 海外だけでなく日本にも受け入れているホストがいて、国内からでも申し込むことができる。
要するに、農業を手伝う代わりに、食事や宿を提供してもらうということらしいです。
お金目当てでやるには割りに合わないでしょうが、「お金よりも居場所ややりがいがほしい」・「とりあえず衣食住を保証したい」という人であればよさそうなサービスです。
海外でもあるみたいなので、海外の農家に行けば農業を手伝うだけで無料で食事ももらえるし、寝床ももらえるわけですから、世界一周旅行のついでとかにやってみる価値はありそうです。
公式サイト
https://www.wwoofjapan.com/main/index.php?lang=jp
まとめ
鶴見済さんは、やはり「自殺」に強い興味のある人のようです。
『完全自殺マニュアル』で有名になったので怖い人に思われがちですが、僕は彼の本を読んだおかげでけっこう気が楽になりました。
最後に、彼の思想がよくわかる文章を『人格改造マニュアル』から引用しておきます。
そんな時は自殺してしまうのもひとつの手かもしれない。
認知療法を始め、あらゆる心理療法や精神医学は自殺を否定している。「どんなことがあっても、絶対に自殺だけはすべきでない」という立場である。
しかしこんな極端な考え方自体が認知の歪みである。「自殺しないほうがいい場合もあれば、したほうがいい場合もある」というのが合理的な考えだ。
「絶対に自殺はダメ」などと思った途端に、うつに悩む人は”生の鎖”に縛られて身動きが取れなくなる。かえって最後の逃げ場が塞がれてしまい、余計なプレッシャーを感じることになる。
「イザとなったら自殺してしまえばいい」と思っていたほうが、よほど楽だ。
目標は苦痛から逃れて楽になることなのだ。「とにかく生きること」などではない。自殺も、転職や失踪などと同じく、苦痛から逃れる手段のひとつに過ぎない。
後ろに非常口があると分かっていたほうが目の前の戦いに集中できるのと同じように、「自殺」という逃げ道があることを知っていた方が、よりベターな人生を送れるのではないかと僕は思います。
こう考えた方が生きるのは楽かもしれない。 pic.twitter.com/UKjLFWNjx9
— タロン@本読み (@shin_taron) June 11, 2021
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