こちらの本を読んで、文系出身の僕は衝撃を受けてしまったので紹介します。
アカデミア(研究者の世界)を離れて、民間で就職した21人の博士号取得者の体験談が登場します。
衝撃的だったのは、その21人が全員そろって、理工学や農学などの理系出身者たちばかりだったということです。
1.理系はやっぱり「つぶしがきく」?
本書ではたとえば、39歳にして初めて民間の「データサイエンティスト」という仕事に就職した人の体験談が出てきます。
もちろんこの人は理系出身。
データサイエンティストとは、ざっくり言うと「顧客企業のデータを分析してマーケティングに役立てる」みたいな仕事ですが、やはり理系出身だと39歳でもこういう専門職にも就けるのです。
文系研究者の場合は、正直言って、
たとえば、文学研究で小説のテキストを読み込む研究をしていたとしても、それを直接、民間企業の仕事に応用するのはかなり難しいです。
(翻訳者ならワンチャンいけますが)
しかし、理系なら、統計やデータ解析などの研究をしていることも多いので、わりと民間企業の仕事にも直接応用できたりするんですよね。
IT時代が始まって以降は、よく「STEAM教育」が大事だと言われます。
STEAMとは、つまり、
・Technology(技術)
・Engineering(工学・ものづくり)
・Art(芸術・リベラルアーツ)
・Mathematics(数学)
──この5つの勉強分野の頭文字のことです。
一目でわかるように、理系科目ばかりですよね。
要は、「IT時代においては、理系科目が大事ですよ」ということです。
もちろん、だからといって、「大学の文系学部は役に立たないから廃止しろ!」みたいな文系学部不要論になるわけではないですが、
文系学部出身である僕は、別に文系学部に進学したことを後悔しているわけではないのですが、やはり社会人になってからは「あらゆる場面で理系的な発想が求められるな」と感じるのも事実です。
あのスティーブ・ジョブズも、
「文系と理系の交差点に立つ人が必要だ」
──というようなことを言っていましたが、やはり、「文系的な発想も理系的な発想もできる」というハイブリッドな人材が現代では必要なんじゃないでしょうか。
なので、まあ何が言いたいかっていうと、「文系だから文系の勉強しかしない」というのは、やはりIT時代の現代にとってはリスキーな選択だということです。
僕も、最近は理系の勉強をするようにがんばっております……。
2.本書の文系バージョンは出ないのか?
本書は、「理系の博士号取得者が民間に就職したらどうなったか?」というテーマです。
文系出身の僕としては、ぜひ本書の文系バージョンも読んでみたいですが、それは難しそうですね。
なぜなら、文系(特に文学系や哲学系)の博士号取得者が民間企業に就職するのは、かなりムズカシイからです。
理系と違って、文学や哲学の研究内容は民間企業に応用しにくいのは、みなさんもわかると思います。
なので、「文系博士号取得者が民間企業に就職して成功した!」というエピソードはかなり少ないと思います。
本書では、文系博士号取得者については全く触れられていませんが、それが逆に文系博士号取得者たちの就職難を暗に示しているような気がします。
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ということで、今回は、
──という話でした。
大学院進学を考えている人や、大学院に在学中の人には特におすすめします。
理系/文系の壁みたいなものを感じられると思いますので。
参考文献
文系と理系の存在意義みたいなものもわかるはずです。
「文系と理系の交差点に立つ人材が必要」という言葉は、本書からの引用です。
文系と理系の両方の分野を往復して、iPhoneという革命商品を生み出したジョブズの人生は、IT時代を生きる上での参考になるはず。
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