実は以前、奈良少年刑務所に見学に行ったことがあるのですが、これはそのときに買った本なんです。
著者の寮 美千子さんは童話作家で、奈良少年刑務所で取材をされていたそう。
この本の中には、受刑者たちの書いた「詩」がおさめられています。
罪を犯した少年たちはどんな詩を書いたのか……。
少しでも気になる人は、買って損はないですね。
ここでは、僕が気に入った詩を1つ紹介したいと思います。
恥曝(はじさら)しの末路
ぼくは風船人間
今現在 気体を注入されて 膨らんでいます
けれども その気体は水素なんて 立派なものではなく
憂鬱 倦怠 厭世観 るさんちまん といった
有害物質を数多く含んだものです
注入が終われば、やがて空へと飛んでいき
黒い烏(からす)のの嘴かなにかで突っつき破られるでしょう
風船人間が始末に負えないのは
破られた後も周囲の空気を汚染し続けてその存在がなかなか失われないところにあります
一読して僕はびっくりしました。
こんな含蓄に富んだ詩を書けるなんて、才能というしかないですよね。
風船人間というのは、罪を犯した自分のメタファーなのでしょうか?
中には清浄な空気ではなく、有害物質が詰まっているというのも、罪を犯した当時の少年の心情を語っているのかも。
これ、いくらでも読み取れますよね。
多数の解釈の余地がある文章というのは、めったにお目にかかれません。
この詩を読んだだけでも、この本を買った甲斐がありました。
ちなみに、奈良少年刑務所に見学に行った際に、著者本人にサインしてもらいました。
著者の方とも少しだけお話ししたのですが、とても慈愛にあふれた優しい人でした。
こんな人になら、あるいは少年刑務所の子供たちも心を開くのかなあ、と思わされました。
コメント