前々から陰謀論にハマる人たちのカラクリが不思議だったんだけど、本書でクリアに理解できた。
まさか「政治に関心を持て」と誰しもが小さい頃から教育されてきた常識を打ち破る本だとは思わなかったので紹介する。
政治に興味を持ちすぎると陰謀論にハマる
本書で最も衝撃的なデータは間違いなくこれ。
細かく知りたい人はぜひ本書のp183あたりを読んでほしいんだけど、本書から引用して結果をまとめてみる。
これらの結果は、プライベートなことに向ける関心の度合いが高いほど、陰謀論を受容しにくい傾向にあることを意味している。日常生活に身近なトピックへの関心が高い人ほど、様々な陰謀論を受容しにくい傾向にあるようである。
(中略)
つまり、政治や社会などの公共的な関心が高い人の方が陰謀論に引っかかりやすく、自分の生活中心で、政治や社会に関心を持たない人の方が陰謀論を信じにくい傾向にある。
『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』より
これ、常識を裏切る結果だと思わないだろうか?
日常生活が中心で自分の半径数メートルにしか興味を持たない人なんて、「最近の若者はけしからん!」とキレてくる老人がいそうなものだ。
でも、そういう半径数メートルにしか興味を持たない人の方が陰謀論にハマりにくいという実験結果が本書では提示されている。
なんで、日常生活中心の人は陰謀論にハマりにくいのだろう。
もっぱら日常生活を充実させることに力を注いでいて、政治や社会などの公的な事柄に目を向けない人にとっては陰謀論に接する機会もないと考えられる。
『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』より
身もふたもない言い方をすれば「自分の楽しい人生に意味不明な陰謀論が入り込む余地はない」ということなのかもしれない。
つまり、日常生活に満足している人は、わざわざ陰謀論にハマる動機がないのだ。
陰謀論にハマる人は日常に不満がある
本書のデータを信じるなら、陰謀論にハマる人は日常生活に不満があるということになる。
人はたとえばこのように陰謀論にハマるのだろう。
- 仕事をがんばってるのにぜんぜん会社に評価されない(日常生活の不満)。
➡︎何か裏で大きな組織が動いてるに違いない。
➡︎調べてみたら、「ディープステート」という秘密結社があるらしい。
➡︎俺が会社に評価されないのは秘密結社のせいだ!
➡︎陰謀論者になる
最初の日常生活の不満には「会社に評価されない」以外にも、「恋人ができない」「就職できない」「年収が上がらない」などにも置き換え可能。
これらの不満の本当の原因は、単に本人の努力不足だったり、努力の方向ミスだったりするんだけど、人はなかなか自分の非を認めることはできない。
なにか原因はないか……と探していくうちに、わかりやすい悪を提示してくれる陰謀論のサイトなどを見つけてしまうのではないか。
一般的に言って、政治に関心を持つのは「いいこと」とみなされているし、 選挙前になればしばしばそうした啓蒙活動が行われる。
しかし、政治への関心を持つことで、陰謀論に近づく可能性を高めることを考えると、必ずしもそれが純粋に「いいこと」とは限らず「副作用」もあるということを念頭に置いておく必要があると言える。
『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』より
政治に関心を持つことは大事だと、俺も大学までずっと教えられてきたけど、
リテラシーの低い人が政治に関心を持っても、陰謀論にハマるだけなのかもしれない。
ちなみに、だからといって本書は「陰謀論にハマらないためには政治に関心を持つな」と言ってるわけではなく、「バランスが大事だよ」と言っている。
さすが、老舗の出版社の中公新書なので、とても慎重な姿勢でさすが学者だと思う。
ホリエモンとかひろゆきなら「政治に関心を持つ奴は陰謀論者になる」と断定口調で言ってそう。
俺は政治に無関心でいたい
ここからは完全に俺の意見なんだけど、俺は政治に無関心でいたい。
結局のところ、少数派の若者が多数派の高齢者が支配する日本政治を変えることはできない。
最初から勝ち目のない壁に挑むくらいなら、自分の日常生活を充実させることを考えた方がいいと思う。
最近の若者は政治に関心がなくてけしからん!
━━と老害が言ってきても無視でいい。
政治を変えるより、自分を変える方がはるかに手っ取り早い。
実は俺は法学部政治学科出身だから、20代最初の頃は割と政治的意見を持ってたんだけど、今では黒歴史になっている。
ちなみに本書の著者も、昔はネトウヨをやっていたことを赤裸々に語っている点も本書の読みどころ。
政治に無関心でいた方がいいよ、という話は別記事に書いたので、ぜひどうぞ。
俺はこの書評ブログとは別に、政治と自分を切り離してぼっちで生きていくことがテーマのブログをやっているのでそちらも読んでほしい。
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