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2022年読んでよかった本10冊

村上春樹を知るためのおすすめの解説本・研究書3選

村上春樹 おすすめ 解説

村上春樹はかんたんそうに見えて、かなり難しいです。
 
現実世界と深層世界の二重構造だったり、霊的世界のメタファーだったり……。
 

村上春樹を読んで、すんなり理解できる人は、少ないはず。

村上春樹の小説が難しいせいか、世にはハルキワールドの解説本がかなりあります。
 
もはや、村上春樹の本より、解説本のほうが多いかも。

 
ただ、解説本と言いながらも、ぜんぜん説明できていない本もあるので、クオリティーはピンキリです。
 
 
初心者にも分かりやすく説明している本を3つに厳選したので、ご覧くださいませ。

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村上春樹を知るためのおすすめの解説書・研究書3選

では、おすすめの3冊を紹介します。

1冊でわかる村上春樹

 
タイトルの通り、村上春樹の解説書が一冊だけ欲しいなら、これがおすすめ。
 
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』までの長編すべてと、主要な短編すべてに解説がついてます。
 

 
こんな感じで図解がありますので、読みやすいですしね。
 
僕が驚いたのは、村上春樹の小説はほぼすべて、「現実世界と深層世界の二重構造である」ということです。

・『羊をめぐる冒険』では、北海道の牧場が深層世界。
 
・『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、壁に囲まれた街が深層世界
 
・『1Q84』では、月が2つある世界が深層世界。

──みたいな感じで、村上春樹の小説って、ほとんど現実と深層の二重構造なんですよ。
 
言われてみれば当たり前ですが、解説本を読まないとこういうことにも気づけないものです。
 
メモ
ちなみに、最新作の『騎士団長殺し』も、そのまま現実と深層の二重構造でした。
 
村上春樹の小説は二重構造なんだと理解して読むと、一気に読みやすくなります。

村上春樹 イエローページ

 

『ノルウェイの森』の2冊の表紙の色(赤・緑)を混ぜると、黒色になる。
 
つまり、『ノルウェイの森』は鎮魂の書なのだ。

 
──という説が有名な、村上春樹解説本です。
 
今回紹介した3選の中では、いちばん網羅的なので、村上春樹の小説を深く理解したい人におすすめ。
 
村上春樹の小説は時系列がやたら分かりにくいですが、そのへんもしっかりと整理されています。
 

 
全3巻あるので、ボリュームはたっぷりです。
 
村上春樹の解説本では、このイエローページは欠かせないですね。
 

村上春樹にご用心

 
村上春樹についての、ゆるい評論本です。
 
村上春樹と冬のソナタの共通点がおもしろかった。
 

「村上春樹を読んだけど、よくわからん」

──という人は、まずこの本を読んでみると、とっかかりにはいいと思います。
 
かなり主観的な感じはありますが、別に僕らは村上春樹の論文を書くために読むわけではないので、この本でじゅうぶんでしょう。

その他の解説書・研究書

病む女はなぜ村上春樹を読むか

 
タイトルに引かれましたが、内容は微妙。
 
村上春樹のセックスシーンに関する解説が多かったですが、ちょいと気持ち悪くね…?


 

芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか

 
芥川賞がもらえなかった村上春樹をイジった本。
 
芥川賞の腐敗を描いているのかと思いきや、かなり本格的な文学史が解説されています。

村上春樹はノ-ベル賞をとれるのか?

 
村上春樹がノーベル文学賞をとれる可能性について論じた本。
 
ノーベル文学賞の傾向と対策が知りたい人におすすめ。(受験かよ)
 
村上春樹の受賞はやはり難しいそうですが、おもしろいのは、歌手のボブ・ディランについて、

ポップ・カルチャーとしての歌詞に賞が与えられることはまずない

──と書かれていましたが、2016年にボブ・ディランはノーベル文学賞を受賞しました。
 
予想が、完全に外れてる……
 
ノーベル文学賞受賞者の予想は相当にムズイので、村上春樹の受賞もじゅうぶんありえると思いますよ!

心をゆさぶる平和へのメッセージ

 
村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチの全文が、英語つきでのっています。
 
村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチは世界的な大事件だったのに、日本の解説書で触れている本は少ないので、この本は貴重。
 
村上春樹のこの受賞には批判も多かったらしく、

村上は躊躇することなくエルサレムへ赴き、シモン・ペレスの手からその賞を受け取ったのだ。罪無きパレスチナ人の血が未だ乾かぬその手から

──アラブ側からは、こんなどぎつい批判もあったそうです。

村上春樹読める比喩辞典

 
影・死・宗教・スパゲティーからカフェオレまで、村上春樹小説のあらゆる比喩を集めた、まさに辞典。
 
村上春樹の比喩をまとめて読みたい人におすすめ。
 
僕が好きなのは、

それから私の中に入って、思い切りかきまわしてほしい。スプーンでココアを混ぜるみたいに。

──という『1Q84』に出てくるこの比喩です。
 
もはや、ハニートラップだよね、これ。

村上春樹ワンダーランド

 
村上春樹の短編を含め、ほぼ全作品のストーリーの要約がのっています。
 
読書感想文とかで、村上春樹のストーリーが手っ取り早く知りたい人におすすめ。
 

「村上春樹を読むのがめんどくさいけど、友達に読んだって自慢したい」というずるいあなたにもおすすめ。

村上春樹とネコの話

 

・村上龍は犬派
・石原慎太郎は犬派
・三島由紀夫は猫派
・川端康成は犬派
・夏目漱石は猫派

──みたいに、作家を犬派・猫派に分けてるのがおもしろかった。
 
メモ
とうぜんですが、村上春樹は猫派です。

『海辺のカフカ』に猫を惨殺して心臓を食すシーンがあるのですが、それをユダヤ人の大量虐殺と結びつけていました。
 
いろんな読み方があるよね……。

ねじまき鳥の探し方

 
村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を深く知りたい人におすすめ。
 
本書によると、『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる井戸に降りる時に使う縄梯子は23段。
 
『伊勢物語』の23段にも、筒井筒(当時の井戸)の話が出てくるそうです。
 
 
村上春樹は海外の作家にばかり影響を受けていると思ってましたが、まさ日本の『伊勢物語』と関係しているとは……。

村上春樹『1Q84』をどう読むか

 
『1Q84』に描かれている新興宗教「さきがけ」のリーダーは、本当にオウム真理教の教祖がモデルなのか。
 
など、かなり本格的な評論文を集めた本。
 
『1Q84』について深く知りたいなら、これ。

村上春樹のなかの中国

 
村上春樹が中国などのアジアで、絶大な人気を誇るのはなぜか?
 
香港では民主化がなかなか進んでいませんが、民主化運動に力を与えているのが村上春樹の作品だそうです。
 
たしかに村上春樹の作品って、読むと前向きになれる感じありますもんね。
 
 
村上春樹とアジアの政治運動を結びつけた解説本です。

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』をどう読むか

 
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を深く知りたいなら、この本。
 
記憶と歴史をめぐる物語、トラウマとその治療の物語についての考察です。
 
一部にかなり村上春樹をディスってる文章もありますが(豊崎由美のやつ)、それも含めて楽しめます。

村上春樹と私

 
村上春樹の翻訳者であるジェイ・ルービンが日本語で書いた本です。
 
「日本語には名詞の単数と複数の区別がない」せいで困ったという翻訳の難しさなども語られています。

ハルキ・ムラカミと言葉の音楽

 
村上春樹の翻訳者であるジェイ・ルービンの本。
 
村上春樹の初期作品にはジェイズ・バーが出てきますが、

ジェイ(J)=Jesusの象徴?

──みたいな解釈がありました。
 
やはり外国から見ると、キリスト教に結びつけますよね。

世界は村上春樹をどう読むか

 

60年代日本に続いて80年代から90年代にかけて高度経済成長を体験した東アジアでは、台湾、韓国の青年たちが80年代末の民主化達成後の虚脱感に陥り、香港や北京、上海の学生たちはあの悲惨な血の日曜日事件で中国民主化の希望を失って挫折感を味わい、村上文学に共感を抱いた。

 
──アジアで村上春樹が読まれている理由って、こうだったんですね。
 
村上春樹の翻訳における、最大のアドバイザーである柴田元幸の本です。
 
これは読まねば。

村上春樹の隣には三島由紀夫がいつもいる。

 
村上春樹は「三島由紀夫の小説がキライだ」と言っていますが、おそらくそれはウソ。
 
村上春樹と三島由紀夫には、かなり共通点があるのです。
 
『羊をめぐる冒険』は、三島由紀夫の命日からストーリーが始まりますからね。

村上春樹いじり あなたはまだ春樹の楽しみ方を知らない

 
村上春樹のセックス自慢的な調子に乗った文章をぶった斬った本です。
 
だいぶいじってますが、おもしろいですよ。

ふたりの村上

 
「思想界の巨人」と言われた吉本隆明の村上春樹解説本。
 
村上春樹と村上龍を比較していますが、これもおもしろい。
 
吉本隆明は『ノルウェイの森』を高く評価していて、

男女の性的関係を含んだ友情が愛にまですすんでゆくことができず、性的関係を含んだ男女そのものが、愛情の持続(結婚、家庭)にまでいくことができない男女の関係が、まともに描かれているということだ。これもたぶんわが近代文学では、はじめてではないか。

──と絶賛しています。
 
かなり本格的な評論だし、日本語も古風なので、読みづらさはありますが読む価値ありです。
 

おわりに

いや、多すぎだろ。
 
──と思ったあなたは、正常な感覚の持ち主です。
 
ほんと、村上春樹の解説本、多すぎ。
 
 
まあ、こんなに読むのはハルキに狂ってる僕くらいなので、あなたはどれか1冊だけでじゅうぶんです。
 
やはりいちばんおすすめは、これですね。

 
 
以上! 最後まで、ハルキ・ワールドに付き合っていただき、感謝です!

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