僕は筒井康隆の作品をほぼ全て読んでいますが、なんと、そんな僕でもまったく知らなかった短編があるとのこと。
その短編の名は『邪学法廷』。
とある論文からの不正な引用があったらしい問題作で、単行本にも全集にも収録されていません。
『邪学法廷』を読むには、SFマガジン1968年5月号を読むしかありません。
ということで……。
図書館まで行って件のSFマガジンを書庫の奥から引っ張り出してもらいました。
古い雑誌で、時の流れを感じます。
扉絵はこんな感じ。
扉絵に書いてある文章は、こう。
自他共に許す宇宙物理学界の権威が、なぜ諸科学の論理的基盤をなすフォイエルシュタイン哲学を否定するに至ったのか?
「フォイエルシュタイン哲学」というのは、どうやら、架空のようです。
で、この短編の内容、法廷でのやりとりをめぐるストーリーなのですが、かなり小難しい内容です。
ざっくりストーリーを言うと、
そのせいで学生たちが、いっせいに文化系大学に移りはじめた。
それを営業妨害とみなした大学側が、裁判を起こした。
裁判では、教授がなぜ「フォイエルシュタイン哲学」を否定したのか、追及がはじまる。
──というストーリー。
が、いかんせん内容がむずかしくて、ラストのオチもわかりにくかったですね……。
どのような発見も他人に理解できる表現を見つけるまでは、喋ってはならない。自らの発見を他人に理解させられない人物はいかに自分を天才と思い込んでいても天才ではない。精神病者にすら彼らなりの発見はあるのだから。
──こういう文章が最後のほうにあって、
「いくら画期的な発見とはいえ、それを無責任に他人に伝えてはいけない」
というような、発明者の社会的責任に関する教訓がテーマ? なのでしょうか。
どの箇所が論文の不正引用だったのかはわかりませんが、難しい内容に耐えかねた筒井康隆が論文からそのまま引用してしまったのかもしれません。
とりあえず、冒頭のページをのせておきます。
興味がおありの方は、図書館に行って読んでみてください。
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