最近はコロナ禍で外国への関心がうすれがちですが、こちらの『異文化理解力』という本で紹介されている「カルチャーマップ」を見て、
━━と思ったので内容を要約しつつ、紹介します。
外国人と一緒に働くときや、海外旅行に行くときにも役立つので、かなりおすすめです。
1.8つの指標
まず、本書で紹介されている8つの指標を、一つずつ簡単に紹介します。
この8つの指標をまとめると、超役に立つ「カルチャーマップ」ができあがるので、お楽しみに!
①コミュニケーション
「NO」とはっきり伝える。
・ハイコンテクスト=相手に伝えたいことをほのめかして伝える文化。
「NO」とはっきり言わない。
日本は典型的なハイコンテクスト文化で、自分の意見をはっきり伝えず、「あっ、察し……」みたいに察する文化です。
逆にアメリカはローコンテクスト文化なので、はっきりと言葉にして相手に伝えないと察してくれません。
僕ら日本人はハイコンテクストな文化出身なので指標の右側に位置します。
なので、指標の左側にある、アメリカ、オーストラリア、カナダなどローコンテクスト文化の国に旅行するときは、しっかりと言葉に出してはっきり伝える努力が必要になるということです。
逆に、韓国、中国、インドネシアなどは、日本と同じハイコンテクストな文化だということが一目でわかりますね。
以下の指標も、これと同じ要領で見ていけばOKです。
②評価
ロシアやオランダは、相手のダメなところをはっきりと伝えますが、日本やタイはオブラートに包んで遠回しに伝えます。
僕のイメージでは、アメリカ人ははっきりとダメなところを伝えると思っていましたが、この指標を見ると、アメリカは中間に位置していますね。
日本人がロシアやオランダ人と接する場合は、気をつかって相手の欠点を伝えないと、かえって「不誠実だ」と思われるおそれがあるということです。
ちなみに、①コミュニケーションと②評価を、座標軸に表すとこうなります。▼
Aに位置する国は、ローコンテクストでかつ、相手のダメなところをはっきり伝えるので、非常に明快でわかりやすいコミュニケーションをする国です。
それに対して、Dに位置する日本のような国は、ハイコンテクストでかつ相手のダメなところを遠回しに伝えるので、外国人から見ると非常にわかりにくいコミュニケーションをする国なのです。
こう考えると、Dに位置する日本からAに位置するオランダなどの国に移住するのは、コミュニケーションが正反対なのでいろいろ苦労しそうです。
③説得
例)「人間はみんな死ぬ」という一般原理から始めて、次に具体的な事例「オバマ大統領は人間だ」に移る。
そこで「オバマ大統領も、やがては死ぬ」という結論が導き出される。
・応用優先=帰納的思考
例)ミネソタ州に何回も来ると、来るたびに気温が低いことを体験するため、ミネソタの冬は寒いと結論づけるだろう。
この場合、現実世界のデータを観察し、その経験的な観察をもとに、普遍的な結論を導き出している。
━━と考えてください。
指標の左側に位置する原理優先の国の人々は、「どうやって(How)」よりも「なぜ(Why)」を重視します。
それに対して、指標の右側に位置する応用優先の国の人々は、「なぜ(Why)」よりも「どうやって(How)」を重視します。
たとえば、「A社と契約しよう!」となった場合、応用優先の人々だと、「どうすればA社に契約したいと思ってもらえるか」・「契約の書面はどうやって用意しようか」など、実践的な手段について考えます。
それに対して、原理優先の人々だと、「なぜA社と契約しないといけないのか?」と、そもそも論的なことを考える、ということです。
ちなみに、日本をはじめとするアジアの思考法は特殊なので、指標にのっていません。
さすがにここは割愛しますので、気になる人は本書を読んでみてください。
④リード
例)社長と平社員が下の名前で呼び合うようなフラットな関係。
・階層主義的=権力格差が高い
例)部下が上司に意見するのはむずかしく、肩書きが絶対な関係。
これはみなさんもお分かりかと思いますが、日本は指標の右側の階層主義的な国に位置します。
日本の会社ではいまだに年功序列的な雰囲気が残っていて、年上の上司と下の名前でフランクに呼び合うなんてことはないでしょう。
それがイヤな人は、指標の左側に位置するデンマークやオランダなどで働くといいかもしれません。
⑤決断
これも感覚的にわかるとおもいますが、日本は関係各所に合意を得ないと何事もすすまないので、指標の左側の「合意志向」に位置します。
(いわゆる「根回し」ってやつは日本特有の慣習らしいです)
それに対して、指標の右側に位置するナイジェリアや中国は、根回しなどしなくてもトップの鶴の一声で組織が動く、「トップダウン式」です。
どちらが優れているのかはムズカシイ問題ですが、ビジネスにおいては動きが速い「トップダウン式」のほうが有利でしょう。
最近の中国企業の台頭の理由は、トップダウン式で意思決定をするその速さにあるのかもしれません。
⑥信頼
・関係ベース=人間関係はゆっくりと作られ、チームが解散しても関係は長く続く。
日本人からすると、指標の左側に位置するアメリカ人はコミュ力が高く、初対面の人でもすぐに仲良くなって一緒に仕事をしますが、仕事が終わるとすぐに他人に戻ります。
(ちょっと冷たく見えるかも)
指標の右側に位置する日本や中国だと、初対面で瞬時に仲良くなるのはムズカシイですが、長い時間をかけて仲良くなると一生ものの友情に発展します。
指標の右側に位置する国の人と最初は仲良くなれなくても、時間をかければ親友になれる可能性があります。
逆に、指標の左側に位置する国の人と初対面で仲良くなっても、あっさりと関係を切られてしまうこともあるので期待のしすぎは禁物です。
⑦見解の相違
・対立回避型=意見の衝突は歓迎されないので、グループの調和が最優先。
これも、日本が指標の右側に位置するのは感覚的に分かりますよね。
日本人は相手の意見を論破するのが苦手です。
(「和をもって貴しとなす」の精神です)
この指標を見ると、意外にもアメリカは中間で、フランスやドイツが左側なんですよね。
日本は相手の意見を否定するのが苦手なので、活発な議論には向いてないのかもしれません。
⑧スケジューリング
例)日本の電車は時間厳守で、数分遅れただけで謝罪のアナウンスが入る。
・柔軟な時間=タイムスケジュールはテキトーに組まれていて、その場その場で柔軟に時間を調整する。
例)待ち合わせの時間に数十分遅れるのは当たり前。
日本とドイツは指標の左側に位置します。
日本人もドイツ人も時間はきっちり守るので、「日本人とドイツ人は似ている」とよく言われるのはここに由来しているのかもしれません。
日本人でも遅刻癖がある人は、指標の右側に位置する国に移住すると、みんな遅刻があたり前なので幸せになれるかもしれません。
2.カルチャーマップ完成!
さて、これで8つの指標をすべて紹介しました。
お疲れさまでした。
これでめでたく「カルチャーマップ」の完成です。▼
フランス・ドイツ・中国・日本の4ヵ国を、8つの指標で分類した折れ線グラフです。
ほとんどの人は、「外国人は話が通じない」と思考停止状態ですが、こうやってグラフにするとそれぞれの国の位置情報がわかるのはすごいですよね。
日本は特殊すぎる国
お気づきになったでしょうか。
日本は中間ではなく、右端か左端に位置していることがほとんどなんですよ。
やはり、日本は島国であるせいか、かなり特殊な国のようです。
本書でも、日本人とのコミュニケーションの苦労談がたくさん出てきます。
外国に行かずに日本国内だけで暮らしているほうが楽だっていうのも、そりゃ分かりますよね。このグラフを見ると。
3.カルチャーマップを役立てるには
このカルチャーマップ、とても便利で汎用性が高いです。
なぜなら、自国と相手国の違いを事前にざっくり知ることができるからです。
たとえば、
➡︎②評価の指標を見て、「あ、オランダは相手に直接ダメなところをはっきり伝える国なんだな。じゃあ日本でやるよりもはっきり意見を言おうか」と心の準備ができる。
・あなたがアメリカに仕事に行く場合
➡︎⑥信頼の指標を見て、「アメリカはタスクベースで信頼を作る国だから、仕事で仲良くなってもプライベートでも仲良くできるとは限らない。仕事が終わって関係を切られたとしても、傷つかないようにしよう」
・あなたがドイツに仕事に行く場合
➡︎⑧スケジューリングの指標を見て、「外国人はみんな時間にルーズだと思ってたけど、ドイツは日本と同じくらい時間をきっちり守る国なんだな。じゃあ、待ち合わせ時間には絶対に遅れないようにしよう」
━━と、このように、自国と相手国の文化の位置情報をもとに、あらかじめ対策できるわけです。
カルチャーマップ、まじですごい!
このカルチャーマップ、海外に行くときにはパスポートより役に立つのでは?(さすがにそれはないか)
とはいえ、もちろんカルチャーマップはあくまで参考程度にしておきましょう。
当然、日本人でも時間を守らない人はいます。すべては国の差ではなく、個人差に還元されるのですから。
【まとめ】
『異文化理解力』というタイトルがテキトーな気がして、あまり期待していなかったのですが、かなり役に立つ本でした。
海外で仕事をするビジネスマンだけでなく、日本国内で外国人と働いている人は必読でしょう。
今までは、「なんとなくあの国の人とは話が合わないなあ……」と思っていたのが、このカルチャーマップですっきり理解できますからね!
かなりおすすめです。翻訳も読みやすいので、ぜひご一読を。
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