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2022年読んでよかった本10冊

【マッチョ作家】ヘミングウェイおすすめ小説ランキング【長編も短編も紹介】

ヘミングウェイ おすすめ

ヘミングウェイといえば、アメリカのマッチョ作家。
 
 
短編集のタイトルに『男だけの世界』と名づけたことや、戦争や狩り、闘牛などを小説のテーマにしていることからも、ヘミングウェイは男臭い作家だと思われがちです。
 
 
ヘミングウェイがノーベル文学賞を受賞した時も、欧米は彼をムキムキのマッチョ作家だと見なしていたのかもしれません。
 
 
しかし、ヘミングウェイは実は、それほど男らしい性格ではありませんでした。
 
 
ヘミングウェイの作品を読むと、びっくりするくらい女々しく、それでいて女性の心情もうまく描かれているものが多いのです。
 
 
ヘミングウェイは「戦争」を大きなテーマにしていますが、僕は「戦争」とは意外と女性的なテーマなのではないか、とさえ思います。
 
 

 
戦争のテーマの陰に隠れがちな、女性的なヘミングウェイの繊細さを読んでいくと、きっと楽しく読めるはずです。

 
 
では、ヘミングウェイの長編と短編のランキングを紹介します。

タップできるもくじ

長編

1位 武器よさらば

 
第一次世界大戦中に、アメリカ人でありながらイタリア兵に志願した主人公が、戦争中に従軍看護婦と出会い、恋に落ちるというストーリー。
 
 
男性視点から描かれる戦争は、圧倒的です。
 
 
当時、戦争で使われていた砲弾って、空中を飛んでいる時は「ひゅるひゅる」と間抜けな音がするんですよ。
 
しかし、砲弾が炸裂した時は、鼓膜が破れるほどの轟音がひびく。このギャップが恐ろしく怖くて、僕は読んでいる間、まるで本当に自分が戦争に行っているかのような感覚がしました。
 
 
戦争のリアリティーもすごいのですが、従軍看護婦のキャサリンとの恋物語が見どころです。
 
 
戦争で飛び交う砲弾をバックにした恋物語は、素晴らしいの一言。
 
 
僕は実は、結末を読んで泣いてしまったのですが、そんな小説はめったにありません。
 

2位 誰がために鐘は鳴る

 
この小説も『武器よさらば』と同じように、戦争(スペイン内戦)をバックに恋物語が進行するというストーリー。
 
 
戦争を描いたヘミングウェイの作品では、これが代表作でしょう。
 
 
ただ、僕は疑問に思うんですが、なぜアメリカ人がスペイン内戦に参加するのでしょうか?
 
 
日本人に置き換えて考えてみると、日本人が他の国の戦争に命をかけて参戦するわけですから、なかなか考えにくいですよね。
 
 
 
ちなみに、映画版ではキスシーンが有名です。
 
マリアが「キスをする時には鼻はどうなるの?」と聞き、キスをする時には鼻は横に向けるんだと気づく名シーンです。
 

 
 
 
また、本書には、

“The world is a fine place and worth fighting for.”
 
「世界は美しい。闘う価値がある」

──という名セリフがあるのですが、実はこのセリフ、サスペンス映画の超名作『セブン』にもそのまま引用されて登場します。
 

 
「なんと、うまい引用をするのか……」と僕は感激しました。
 
 
映画『セブン』も合わせて、ぜひご覧ください。

3位 老人と海

 
ノーベル文学賞受賞の直接の理由にもなった名作。
 
 
とある老人が、だだッ広い海で小さなボートに乗って、カジキを釣ろうとするストーリー。
 
 
とても短い小説ですが、老人の悲哀が描かれている、まるで叙事詩のような完成度です。
 
 
海とはそもそも生命の生みの親であり、人類の母です。
 
 
海という絶対的な母と、人生を終えかけている老人という対照的な構図がシビれます。

4位 日はまた昇る

 
パリを舞台に、性的不能の男とその恋人をめぐるストーリー。
 
 
主人公のジェイクは戦争中に負った後遺症が原因で性的不能になり、恋人ブレットを満足させられない。ブレットはそんなジェイクを冷たくあしらい、他の男と遊びまわる。
 
 
だからといって、ジェイクは悲しみの感情を表に出さないので、ほんとに悲しんでるのかよくわかりません。
(ハードボイルドな文章なので、仕方ない)
 
 
途中で闘牛を観にいくシーンがあるのですが、ここがおもしろいです。
 
 
闘牛って攻撃的ですごく男性的なスポーツですが、ジェイクは男性の象徴である男性器が機能しないわけですからね。
 
 
いったいどういう気持ちでジェイクは闘牛を観戦しているのでしょうか。とても印象的なシーンです。

5位 エデンの園

 
南フランスに旅行中の夫婦。二人水入らずの旅行のはずが、とある若い美女が関わってくるようになります。
 
 
夫婦二人だけの直線的な関係が、若い女が入ってくることで三角関係になっていくのです。
 
 
「エデンの園」はもちろん旧約聖書の楽園のことですが、その楽園に若い女が侵入してくることで、楽園崩壊に向かいかけるんですね。
 
 
この小説では、楽園が崩壊することなく、結局若い女が追放されてしまいますので、楽園はなんとか維持されます。もちろん、一度夫婦関係に入ったヒビは消えませんが……。

6位 ケニア

 
アフリカを舞台に、夫婦でライオンを狩るというストーリー。
 
 
妻がライオンを猟銃で撃って狩ろうとするのですが、女性であるがゆえ、あまりスムーズにはいかないんですね。
 
 
そのことでちょっと夫婦の雲行きが怪しくなったり……。
 
 
アフリカを舞台にしたサファリツアーみたいなストーリーで、獣との命のやりとりがおもしろい小説です。
 
 
ヘミングウェイ自身も、アフリカで狩りを経験していたらしく、その経験が反映されたやけにリアルなモンスターハンターストーリーです。

7位 持つと持たぬと

 
キーウエストというアメリカの都市を舞台にした、格差ストーリー。
 
 
タイトルからも分かる通り、富を「持つ」人たちと、「持たない」人たちとの格差がテーマになっています。
 
 
ヘミングウェイの作品の中では、「失敗作」と言われていますが、格差や貧困がテーマになっている本作は、現代にも地続きで通じるものがあります。
 
 
原題は「to have and have not」ですが、英文法的には「have and have not」が正しいはず。
 
 
あえて、「to have」としたのは、富を持つ人たちへの皮肉が込められているのかも。
 
 
ただ、残念なことに、現在、日本語訳は非常に古いものしかありません。
 
 
誰か新訳を書いてくださいお願いします。
 

短編

1位 白い像のような山並み

 
カップルの男女が、よくわからない会話を延々と続けるストーリー。
 
 
ヘミングウェイの短編では最高傑作。
 
 
最後まで読まないと会話の内容がまったくわからないという、クイズのような仕掛けになっているのがおもしろいのです。
 
 
小説に出てくる登場人物って、明らかに説明口調な会話をしていたりしますよね。
 
 
読者にわかりやすくするためにそうしてるわけですが、実際の会話って第三者にはわからないような曖昧な言葉ばかりですよね。
 
 
そのリアルをうまく描いています。
 
 
会話がうまく描かれている短編としては、最高峰です。

2位 雨の中の猫

 
雨の中の猫を助けようとする妻。それを冷たくあしらう夫。夫婦の倦怠感を描いた傑作です。
 
 
妻が外で雨に打たれている猫を助けようとするだけの話なのですが、夫婦の会話が妙に上滑りしていておもしろいのです。
 
 
夫が妻の枕を足元に置いてその上に足を置いているという描写があるのですが、妻の枕の上に足を置くなんて、けっこう夫婦関係が冷めていると思いませんか?
 
 
こういう細かい描写が光っていて、読みごたえがあります。

3位 キリマンジャロの雪

 
アフリカで狩猟をしていた主人公がケガをし、妻に看病されるも、悲劇的な結末を迎えるストーリー。
 
 
ヘミングウェイのお好きな狩りの話ですが、ラストが悲劇的でびっくりします。
 
 
妻に看病されて横になっている間、夜の大自然から不気味なハイエナの声が聞こえてくるのですが、これも伏線になってます。
 
 
男は結局、大自然の餌食になります。キリマンジャロの雪に見守られたまま……。
 
 
どうでもいいんですが、僕はこの短編を読むといつも、ボスのコーヒーを思い出します。
 

 

4位 二つの心臓の大きな川

 
とある男が、大自然の中で、野営地を見つけ、キャンプしてテントを張り、食事を作り、釣り道具を作り、ネットを作り、マスを釣る。
 
 
ただそれだけの話で、別段、なにも起こらないストーリーなのですが、なぜかおもしろい。
 
 
おそらく、主人公は戦争の後遺症を負っていて、その傷を大自然と関わることで癒そうとしているんだと思います。
 
 
登場人物は一人だけで、主人公と自然しかいません。
 
 
戦争の後遺症を癒すのは、人間ではなく、大自然の豊穣さなのかもしれません。

5位 インディアンの村

 
とある親子がインディアンの村で出産しようとする女を助けにいくストーリー。
 
 
父は医者で、インディアンの女を麻酔なしで帝王切開しようとします。
 
 
「麻酔なし」という時点で恐ろしいのですが、別にこれはインディアンだから差別していたというわけではなく、止むを得ない処置です。
 
 
無事、女から新たな命が誕生するわけですが、それと入れ替わるようにしてなぜかその女の夫が自殺してしまいます。
 
 
なぜ彼は自殺したのか? 生命の誕生と入れ替わるようにして人生を退場していったのはなぜなのか?
 
 
生と死のコントラストが光る短編です。

6位 嵐の後で

 
とある船が嵐のせいで、沈没。乗客が大勢乗っていたはずなのに、死体が見つからない。
 
 
主人公は船に積まれていた金品を狙って海に潜る。
 
 
窓から船内を見ると、長い髪を四方に散らした女の水死体が浮かんでいた……。
 
 
ほんの短い短編ですが、女性の死体の描写が鮮烈でおそろしいです。
 
 
ヘミングウェイは『老人と海』のように、海が人を殺そうとするシーンをよく描くんですよね。海は怖い。

7位 海の変化

 
『白い像のような山並み』と似たストーリーで、カップルが別れ話をしているシーンが続きます。
 
 
その会話をよく読むと、どうやら女はレズビアンらしく、恋人の男を振って別の女のところへ行きたいらしいと分かります。
 
 
『海の変化』というタイトルですが、実際の海は登場しません。
 
 
「海」は、彼女の心の変化を示すメタファーとして使われているのです。
 
 
恋人がレズビアンだと知った時の男の狼狽も含めて、男女のおもしろい会話劇です。

8位 何を見ても何かを思い出す

 
父と子の微妙な関係を描いたストーリー。
 
 
息子が小説を書いてそれが地域の文学賞かなにかを受賞するのですが、実はそれが盗作だと父は気づきます。
 
 
自分の息子の虚偽に気づいた時、父はどうするのか? 血縁の空々しさを描いた短編です。
 
 
息子の罪は親の罪なのか? いや、もちろん違うはずですよね。

9位 蝶々と戦車

 
スペイン内戦中のとある酒場が舞台です。
 
 
戦争中のぴりぴりムードにもかかわらず、変な男が酒場で水鉄砲を撃ちまくります。
 
 
それにキレた軍人たちが、本物の銃でその男を撃ち殺してしまいます。
 
 
酒場のマスターはこう言います。

彼の陽気さが、戦争の深刻さとぶつかったんです。さながら蝶々みたいに。

──戦車と蝶々という、固さと柔らかさのぶつかりがおもしろいのです。

その他おすすめ本

移動祝祭日

 

もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。

──というエピグラフが有名な、ヘミングウェイのエッセイ。
 
 
「俺は若い頃は、パリに行って文学修行したり、悪いことやったりもしてたんだぜ」みたいな、老人の回想する昔話ですね。
 
 
作家になるための若い頃の苦悩が書かれています。
 
ライバル作家であったフィッツジェラルドの足を「短い」とディスっていたりと、なかなかストレートです。
 
 
パリ時代のヘミングウェイは、『ミッドナイト・イン・パリ』という映画の題材にもなっていたりと、なかなか面白いですよ。
 

お洒落名人ヘミングウェイの流儀

 
ヘミングウェイの晩年は、もう明らかなおっさんになっちゃいましたが、若い頃は大層なイケメンです。
 
 
ヘミングウェイなりにおしゃれもしていたそうですが、ライバル作家のフィッツジェラルドに比べると「ダサい」と言われていたらしい。
 
 
そんな気の毒なヘミングウェイの人生をサクッと紹介してくれる本です。

ヘミングウェイの言葉

 
ヘミングウェイはたくさんの名言を残しています。
 
僕が好きなのは、

もし二人が愛し合っていれば、そこにハッピーエンドはありえない。

──という名言。
 
 
たしかにヘミングウェイの描く恋物語はバッドエンドばかりですからね……。
 
 
名言集は一つ一つの文章が短く、サクッと読めるのでおすすめ。

ヘミングウェイの源流を求めて

 
最近、ヘミングウェイの新訳を次々に書いていらっしゃる高見浩によるヘミングウェイの研究本です。
 
 
僕はこの高見浩の翻訳が好きで、ヘミングウェイはできるだけ彼の翻訳で読んでいます。
 
 
そんな彼が、ヘミングウェイの作品の読み方を語った本です。
 
 

ヘミングウェイがマッチョ的な男性作家ではなく、実は女々しい作家なのだという意見は僕も納得しましたね。

 
 
 
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