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2022年読んでよかった本10冊

【難易度別に紹介】上野千鶴子おすすめ本ランキング

実は僕は2019年の東京大学入学式の祝辞で、初めて上野千鶴子さんのことを知りました。
 
 
この祝辞、とてもおもしろくて、こんな名スピーチが聞ける東大の学生がうらやましいと思いました。
 
 
特に気に入ったのがこの箇所です。
 

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。
 
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。
 
フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

つまり、東大のエリートの卵たちに、

「東大に受かったのは決して自分だけの手柄じゃない。恵まれた環境だったから、受かったんだ。その幸運を自分のためだけに使うな」

──と諭しているわけです。
 
 
勝ち組/負け組に分断されがちな現代において、この言葉は名言だと思います。
 
メモ
スピーチの全文はこちらのサイトで読めます。

 
では、上野千鶴子さんの著作を難易度別に紹介していきましょう。
 

タップできるもくじ

初心者向け

女の子はどう生きるか 教えて,上野先生!

どんな本?
女の子向けに書かれた、たぶん著者の本の中でいちばん読みやすい本。

 
一番読みやすいので、上野千鶴子さんを最初に読む人におすすめ。
 
 
吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』は、主に男の子向けに書かれた本でしたが、本書はその女の子バージョン。
 
 
生き方を知りたい女の子は読んでおくべき本です。
 

往復書簡 限界から始まる

どんな本?
鈴木涼美さんとの往復書簡(往復12回計24信)をまとめた本。
 
お互いに自分の過去を話しながらの手紙なので、読みやすい。

 
鈴木涼美さんは元AV女優で、元記者でもあるという変わった経歴の持ち主です。
 
 
その過去を振り返りながら、ジェンダーやフェミニズムについて語る手紙は、圧倒的な説得感があります。
 
男である僕は、「男って愚かだな」と思いながら読みました。

 
本書でも出てきますが、イギリスの社会学者キャサリン・ハキムが初めて使用した言葉で、「エロス資本」という言葉があります。
 
「エロス資本」とはつまり、
若くて美しい女性のほうが、「性」という商品価値を持っている。

 
──という、かなり残酷な事実のことなのですが、この「エロス資本」を上野千鶴子さんは否定しています。
 
 
その部分を引用しておきます。
 

「資本」とはほんらい利益を生むものですが、経済資本に限らず文化資本(学歴や資格)や社会関係資本(コネ)のような目に見えない「資本」であっても、獲得し蓄積することが可能であるのに対して「エロス資本」は努力によって獲得することもできず(努力によって獲得できると言う人もいますがそれには限界があります)、蓄積することもできないばかりか、年齢とともに目減りしていくだけのものだからです。
 
しかもその価値は、一方的に評価されるだけで、評価基準はもっぱら評価者の手の内にあります。つまり資本の所有者がその資本のコントロールができないと言う状況の下にある財を「資本」と呼ぶ事は間違っています。
 
資本主義は基本的に私的所有権と結びついていますが、「エロス資本」の帰属先(すなわち女性)が、その所有主体であるかどうかも疑わしい状況を「資本」と呼ぶことに、紛らわしいメタファー以上の効果はありません。
 
この概念が示すのは「若くて綺麗な女性は得」という通俗的な世間知を、アカデミックに粉飾しただけのものでしょう。

 
──たしかに女性にとってエロス資本とは、自分で努力して獲得したものではなくて、強制的に与えられたものですから、それを「資本」と呼ぶのはおかしいのかもしれません。
 
 

知識人の中には、「エロス”資本”」ではなく「エロス”負債”」だ、と言う人もいるそうです。
 

女たちのサバイバル作戦

どんな本?
働く女性にとって、今は生きやすいのかどうかを論じる本。
「ネオリベ改革」など、政治のことが多めですが、一般向けなので読みやすい。

 
ネオリベとは、一言で言うと、「自己責任を求める」思想のことです。
 
 
そのネオリベ改革と女性がどう関わっているかを述べている文章を引用しておきます。
 

ネオリベ改革は、既得権益層には不利に、既得権益を持たなかった層には相対的に有利に働きます。その結果、勝ち組と負け組とに分解した人々のうち、既得権益集団の中の負け組が、既得権から排除された集団から生まれた勝ち組に怨嗟を向ける、ということが起きます。
 
大卒男子で就活に失敗したニート、フリーターの男性たちが、女性の勝ち組を「仮想敵」視するような傾向が生まれました。
 
あろうことか、彼らはそういう勝ち組女性をフェミニストと勘違いし、フェミニズムが男を追い詰め女をのさばらせた元凶だと、バッシングの標的にするようになりました。
 
彼らは自分たちを負け組に追い込んだネオリベ改革に敵対する代わりに、叩きやすい弱者に攻撃を向けたのです。

 
ネオリベ改革は男女の分断を加速するのかもしれませんね。
 

情報生産者になる

どんな本?
「論文の書き方」についての解説本。
 
「大学生のうちに読んでおきたかった……」と激しく後悔している僕です。

 
タイトルがややこしいんですが、要は「論文の書き方」についての解説本です。
 
 
卒業論文はどの大学でも、10万字前後という大ボリュームの文章を書かないといけませんが、そんな大量の文章、「なんとなく」では書けません。
 
 
論文を書くには、事前に設計図をつくることが大事であり、その設計図の作り方が本書ではよくわかります。
 
 
たとえば、研究計画書の書き方についても、こんな感じでフォーマットが書いてあります。
 

 
まあ、ふつうであれば、ゼミの教授が教えてくれるはずですが、中には学生の論文指導にまったく興味のない教授もいるので、そういう場合は本書を参考にしましょう。
 
いや、ほんと、大学生時代に読んでおきたかった……

 

セクシィ・ギャルの大研究

どんな本?
著書の処女作。
 
広告の歴史を追い、女性がどのように広告の中で描かれきたかを書いた本。読みやすいですが、アダルトな写真が多めにのってます。

 
上野千鶴子さんが最初に書いた本です。
 
 
女性は広告においてどんな役割を果たしてきたか、なぜ広告において女性は男性よりも小さく描かれるのか。
ジェンダーの観点から、広告の男女ギャップを解き明かす本です。
 
 

食べるという本来の目的には、唇はあってもなくても関係がない。この問題は長いこと進化史上の謎とされてきた。
現在最も支持されている説は、唇は普通の状態では見えないヒトのメスの性器の代わりに、顔の前面に現れた性器のコピーであるという説。
女性器を「下の唇」と言うくらいだから、あながちこの説がうがちすぎとは言えない。

 
 

口紅はなぜスティック型なのか。
昔の人は小さな皿に紅を溶いて小指で口紅をつけた。今でもパレット型の口紅は繰り返し発売される。
スティック型の口紅は単に使いやすいだけでなく、ある象徴性を帯びている。
唇が女性器のコピーであるのに対して、リップスティックは男性器のコピーだから。
女たちは口紅に犯される秘密の楽しみを持っているのだ。

 
 
──などの説は、おもしろかった。
なんか男性がこんな説を唱えるとちょっと気持ち悪いですが、女性の著者なら許されますよね。
 


 

上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!

どんな本?
タイトル通り、フェミニズムについて0から学べる対談本です。
フェミニズムの入門本としておすすめ。

 

 
 
個人的に、なるほどと思ったのは、

The personal is political
個人的な事は政治的なこと

 
──というフェミニズムのスローガンです。
 
 
夫とうまくいかない、親とうまくいかないのは自分が悪いんだ。女性達はそう思って悩んできた。
 
 
しかい、いったんそれを口にしてみたら他の女性にも共通する「あるある」だらけだった。
 
 
それはつまり、自分だけの問題ではない。実は個人の問題ではなく、政治の問題であり社会の問題だった。ということです。
 
 
女性の愚痴というとネガティヴなイメージがありますが、愚痴を言うことによって、「自分の個人的な問題が実は社会の問題だった」ことに気づけるのですから、愚痴もバカにできませんね。
 

スカートの下の劇場

どんな本?
「なぜ男はスカートに発情してしまうのか?」「なぜ女は性器を隠すのか?」 について論じた本。
読みやすい。

 
日本では、女性の乳首は隠されるべきものですが、今でもアフリカなどの未開の部族たちは女性でも乳首をさらしていたりします。
 
 
つまり、「乳首は隠されるべき恥ずかしいもの」というのは、文化的な刷り込みなのです。
 
 
では、なぜ男たちは女性の胸に興奮するのか?
それは「隠されている」からです。隠されている=想像が自由なわけですから、男たちは自分勝手に想像して勝手に興奮するのです。
 
 
これはスカートでも同じことで、隠されているからこそ興奮する。
そんな「スカートの下の劇場」に集まってしまう男たちの行動の謎を、スカートやパンティの歴史から解き明かそうというのが本書です。
 


 

身の下相談にお答えします

どんな本?
読者の「下ネタ系」のお悩みに答える本。
 
読みやすい。

 
悩みの多くは「身の上で」はなく、「身の下」からきます。
 
 
「下ネタ系」の悩みって、近い人間には相談できないですからね。
下ネタを匿名で相談できるのはすばらしい。
 
 
「妻とのセックスを娘に見られてしまいました」などの相談もあり、おもしろいです。

 

女遊び

どんな本?
著者のエッセイ集。京都での学生時代のことなどが書かれているので、古いけどかなり読みやすい。

 
著者自身の学生時代のことも書かれているので、おもしろかったです。
 
 
関西人と東京人の違いとか、当時女子短大で教員をしていた著者から見た女子短大生の生態などもおもしろかった。
 
余談ですが、著者の紹介文がおもしろかった。
芸人のプロフィールみたいなことを書いていた時代もあったんですね。
 

 

「生きづらさ」の時代

どんな本?
「生きづらさ」をテーマにした専修大学でのシンポジウムが元になっている本。
 
上野千鶴子さん、香山リカさん、鳩根克己さんなどの共著。読みやすい。

 
なんで日本では「生きづらい」のでしょう。
 
 
発展途上国の子供達を見ていると、食事に遊びに勉強に、とても楽しそうですが、日本の子供たちは塾に予備校に受験競争で疲れているように見えます。
 
 
もうとっくに高度経済成長期を終えた日本では、「これ以上頑張ってもどうせ成長しない」というような諦めがあるのかもしれません。
 

中級者向け

女ぎらい ニッポンのミソジニー

どんな本?
「なぜ男も女もミソジニー(女嫌い)になってしまうのか?」を論じた本。
東電OL事件、援助交際、皇室などいろんな具体例があるので、読みやすいほう。

 

ミソジニー(女性嫌悪)のまま続いてきた日本社会の構造分析を展開している本です。
 
 
ミソジニーは当然、小説にも及んでいて、よく「男性が小説で描く女性は都合が良すぎる」「女が描けていない」などと批判されます。
(村上春樹の小説がよくこの文脈で批判されます)
 
 
とはいえ、男性の書いた小説を、「女が描けていない。失格。書き直せ」とするだけでは、実りがありません。
 
 
そこで、上野千鶴子は発想を転換します。このように。
 

男の作品を「女についてのテキスト」ではなく「男の性幻想についてのテキスト」として読めば学ぶことがたくさんある。

 

つまり、「男はどんな性幻想を抱いているのか?」「なぜ、男はこんな都合のいい女性をフィクションの中に作り出してしまうのか?」と考えれば、女性から見ると気に食わない男性の小説も、きちんと研究の対象になるのです。
 
 
最近、「女性を性的に見ている」という批判がよくありますよね。
 
 
たとえば、『宇崎ちゃんは遊びたい!』の献血ポスターが、「胸を強調しすぎている。環境型セクハラではないか」として炎上してましたが、これも撤去して「はい、終わり」ではなく、なぜこんなポスターを作ってしまったのか? なぜ男はこのポスターに受けるのか? と、男の性幻想について考えるチャンスでもあるわけです。
 
 
まあ、このポスターは公共の場所に貼られていたそうなので、即座に撤去するのは間違いではなかったと思いますが。
 


 
 


 

不惑のフェミニズム

どんな本?
ジェンダーやフェミニズムに関する著者のリアルタイム発言をまとめた本。
 
一つ一つの章が短くて完結しているので、読みやすい。

 
まえがきにはこう書いてあります。
 

1970年に日本でウーマンリブが産声をあげてから、ちょうど42年。日本の第二波フェミニズムもアラフォーこと不惑の年齢を迎えた。

 
40年経ったから、「不惑」ということですね。
 
 
なんとなくフェミニズムというと、過激なことを言っている印象もあるのですが、本書を読む限り、いたって正論で論理的なことを言っているように僕は感じます。
 
 
個人的には、大阪の図書館で「BL本の撤去騒動」があったのは初めて知りましたね。
 
 
まだBL本がよく知られていない頃ですし、「よくわからんものにはフタ」ということで、BL本が撤去されかけたらしいです。
 

90年代のアダムとイヴ

どんな本?
1990年に放送されたNHK番組「上野千鶴子・1990年のアダムとイヴ」を書籍化した本。
アメリカでジェンダーの研究をする著者の考察が書かれてますが、さすがに情報が古めな印象。

 
内容としては、

・女性社員にお茶の用意をさせるのは差別か
・男らしさを捨てますか

 
──などなど。
 
 
外国でも大体同じようなジェンダー問題が起こっているようですね。
 
 
 
おもしろかったのは、アメリカでは女性兵士の割合が増えていること。
 
 

そんなに平等がいいならお前たちも戦争に行くか、徴兵制も男女平等にして構わないか

 
──というのは、よく女性が男性から受ける反論ですが、これに答えるのはむずかしい。
 
 
ただひとつ言えるのは、今はドローンを遠隔操作して戦争に利用するようになってきているので、そうすれば女性兵士もふつうに戦闘に参加できるということ。
 
 
ドローンを遠隔操作するのなら、男女の体力差は問題じゃなくなりますからね。
 

上野千鶴子が文学を社会学する

どんな本?
著者による文芸評論集です。
 
小説だけでなく、俳句なども出てくるので、知識がないと難しいかも。

 
女性の話し言葉で書かれた太宰治の『斜陽』や、エロチックな恋愛を描いた谷崎潤一郎の『痴人の愛』などの小説を手かがりに、女性の話し言葉の変遷をたどっていく過程がおもしろかった。
 
 
著者の問題意識が書かれている文章を引用しておきます。
 

ところで「文学」は言語表現の聖域、なんかではない。
 
文学もまた時代と状況の産物であり、それを生んだ時代の文脈と切り離せない。
 
しかも学者の書いた本なんかより、ずっとたくさん読者に読まれている。そう考えれば、文学作品は第一級の歴史・民俗資料と言ってよいが、これまで文学は作家主義と作品主義とに阻まれて、そういふうには読まれてこなかった。

 
──思えば文学は、時代の目撃者による証言ですからね。
 
 
単に娯楽のために読むだけでなく、研究として読むこともできるでしょう。
 

「女縁」を生きた女たち

どんな本?
1986〜1987年に実施した「女縁」の研究を元にした本。
 
まあまあ難しめ。

 
「女縁」というのは、著者の造語のようです。
 

「女縁」という聞き慣れない言葉を造語したのは、私である。
 
日本人の人間関係を血縁、地縁、社縁の3つに分類したのは、人類学者の米山俊直さんだが、そのどれにも当てはまらない人間関係を、女性たちが作り出していることに、私は、気づいていた。

 
主婦たちには主婦たち独自のコミュニティがあり、その実態を調査した本です。
 
 
経済的に夫に依存している主婦もいれば、夫に隠れて副業で十分な収入を持っている女性もいたりと、実態はさまざまです。
 

上級者向け

〈おんな〉の思想 私たちは、あなたを忘れない

どんな本?
フェミニズムの名著を読書案内してくれる本。
ちょっと難しいですが、読書案内としておすすめ。

フェミニズムの古典の読書案内です。
 
 
紹介されている本は以下の通りです。
 

・森崎和江『第三の性

 

・石牟礼道子『苦海浄土

 

・田中美津『いのちの女たちへ

 

・冨岡多恵子『藤の衣に麻の衾

 

・水田宗子『物語と反物語の風景

 

・ミシェル・フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意志

 

・エドワード・W・サイード『オリエンタリズム

 

・イヴ・K・セジウィック『男同士の絆

 

・ジョーン・W・スコット『ジェンダーと歴史学

 

・ガヤトリ・C・スピヴァク『サバルタンは語ることができるか

 

・ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル


 
それぞれの読書案内が非常に濃密で、これぞ学者のすべき仕事だなと感じました。
 
 
「まずはフェミニズムの古典を読みたい」という人は、間違いなくおすすめの本です。
学者がおすすめしている古典は読んでおいたほうがいいですからね。
 
 
個人的には、エドワード・W・サイードの『オリエンタリズム』だけ読んだことがあったのですが、「え、この本、別にフェミニズムじゃないだろ」と思っていました。
 
 
ですが、言われてみると確かに『オリエンタリズム』で書かれていた、西洋が日本を見る、ある種見下した視線というのは、まさに男性が女性に向ける視線と同じなのです。
 
 
同じ本でも違う学者が見ると、全く違ったように読めるという好例ですね。
 


 

発情装置

どんな本?
「人が欲情するのはなぜか?」について論じた本。
春画・写真・オブジェなどのアートからも読み解いているので、興味のない人にはむずかしいかも。

 
著者いわく、
エロスとは発情のための文化的装置(シナリオ)」と定義しています。
 
「装置」という表現は、フーコーの「セクシュアリティの近代の装置」という概念に由来しているらしい。

 
もちろん、本書は発情装置なのではなく、「発情装置」を論じた本です。
 
 
よく、「男が女性の胸を見たがるのは男性の本能だ」みたいに言われますが、そのへんの女性が平気で胸をはだけて子供に乳をやっていたりしていた江戸時代は、男の方も女性の胸にはそれほど関心がなかったそうです。
 
 
つまり、女性が胸をブラジャーで隠すようになってから、男は胸に興奮し始めたと。
 
 
じゃあ、男が女性の胸に興奮するのは、本能じゃなくて、文化のせいだな、とわかるわけです。
 
 
本書では、そんな文化としての発情装置が論じられています。
 
 
80年代〜90年代に流行った、ブルセラや援助交際についても、学問的な観点から書かれていて、少し内容はムズイですが、おもしろい。
 

脱アイデンティティ

どんな本?
著者が編集した本なので、大半は著者以外の学者による文章なので注意。
学者むけに書かれているので、かなりむずかしい。

 
20世紀はアイデンティティーという概念が席巻した時代でした。
 
 
人々はアイデンティティーなしでは生きられず、宗教や文化や民族アイデンティティーをめぐって殺し合うことさえ起きたのです。
 
 
「アイデンティティー」という概念を初めて使ったのは、フロイト派の社会心理学者、エリック・エリクソンです。
 
 
このよく使われるけどわかりにくい「アイデンティティ」についての論考集です。
かなり難しいですね。
 


 

ナショナリズムとジェンダー

どんな本?
従軍慰安婦についての論考なので、むずかしめ。
でも、歴史に翻弄された女性の運命がわかります。

 
本書の核になる文章を引用しておきます。
 

単に事実ということなら、慰安婦の存在は誰にも知られていた。隠されてさえいなかった。変化したのは「事実」の捉え方のほうである。誰一人犯罪だと考えていなかった慰安婦制度が、当事者が自らを被害者と自己定義することを通じて、性犯罪として再構成されたのだ。
 
もっと正確な言い方をしよう。加害者の側が誰一人犯罪だと考えていなかった一つの歴史的「事実」が、しかも被害者の側の沈黙によって支えられてきた「事実」の信憑性が、被害者がそれとは異貌のもう一つの現実を構成することで初めて挑戦を受け、覆されたのだ。

 
従軍慰安婦が問題になるまでの歴史的経緯がよくわかるので、おすすめです。
 
 
従軍慰安婦は、とりもなおさず、女性にとって重要な問題なので、フェミニストにとっては避けて通れない問題なのかもしれません。
 

生き延びるための思想

どんな本?
「弱者が弱者のままで尊重されることを求める」という著者の思想がよくわかる本。
 
1章はかなり難しめなので、2章から読むのがおすすめ。

 
上野千鶴子さんは他の本でも繰り返し、

「弱者が弱者のままで尊重されることが大事」

──と言っていますが、その思想がよくわかるのが本書です。
 
 
男女平等が進むと、必ず「女性も戦争に行くべきだ」「軍隊だって、男女半々にすべきだ」という意見が出てきますが、さてそれは本当なのでしょうか?
 
 
著者はこう言っています。

だが、もしフェミニズムが、女も男なみに強者になれる、という思想のことだとしたら、そんなものに興味は無い。
 
私の考えるフェミニズムは、弱者が弱者のままに尊重されることを求める思想のことだ。
 
だから、フェミニズムは「やられたらやり返す」という道を取らない。相手から力ずくで押し付けられるやり方にノーを言おうとしている者たちが、同じように力ずくで相手に自分の言い分を通そうとする事は矛盾ではないだろうか。
 
フェミニズムに限らない。弱者の開放は「抑圧者に似る」ことではない。

 
女が男のような権力を持つことが、フェミニズムのゴールではないってことですね。
 

対談集

しがらみを捨ててこれからを楽しむ 人生のやめどき

メモ
高齢者のお二方による、対談本。読みやすい。

 
 
「いい嫁は社会の敵」という考え方があって、
 

真面目で責任感の強い嫁が、家父長制を再生産します。
ボケた夫や嫁ぎ先の両親を自宅で介護して、あの世に送り届けなければ死ねませんでしたから。良い嫁は社会の足を引っ張る。

 
──とのことです。
 
 
まあ、女性が結婚したとしても、夫の両親を介護しなければならない義務はないので、見捨てちゃっていいと僕は思いますけどね。
 
 
好きで介護するならいいですが、いやいや介護させられている女性は搾取されているのかもしれません。
 

セクシュアリティをことばにする

どんな本?
対談相手は作家から学者までいろいろ。読みやすい。

 
現代でも、性は語りにくいテーマです。
 
 
性を語るボキャブラリーがそもそも少ないし、反射的に嫌悪感を感じるほど、性を語る言葉はタブーだと意識されているからです。
 
 
「下ネタ」を振られた女性は「ちょっと、何言ってるんですか〜」みたいに軽く受け流すのがお作法みたいになっているから、そもそも性の話題について深く考察するという習慣がないのかもしれません。
 
「語りにくいセクシュアリティを言葉にする」

 
──そんなコンセプトで、語りにくい性のテーマに、語りやすい言葉を与えてくれるのが本書です。
 


 

快楽上等!

どんな本?
怒りの上野さんと遊びの湯山さんによる対談本。けっこう過激です。

 
 
医学用語でいう感覚器官の「予測誤差」の話がおもしろかった。
たとえば、自分で自分をくすぐっても大してくすぐったくありませんが、他人にくすぐられると非常にくすぐったいですよね。
 
 
自分で自分の体に触ると、脳が無意識に予想するので気持ち良くない。
しかし、他人に触られると、気持ちよさが予想できず、「予測誤差」があるため、気持ち良くなる。
 
 
これが、オナニーがそれほど気持ち良くなく、他人とのセックスが気持ちいい理由です。
 
 

また、日本の引きこもりも「予測誤差」で説明できます。
引きこもりたちは、複雑すぎるリアル社会ではあまりにも予測誤差が大きいために適応できず、予測誤差がほとんどない親元の実家で引きこもってしまうのです。
 

ニッポンが変わる、女が変える

どんな本?
12人の女性論客が、「3・11後の日本」を論じた本。読みやすい。

 
「東日本大震災以降は、成長していくのではなく、縮小していかないといけないのではないか」という意見が書かれています。
 
 
縮小のお手本になるのが、イギリスです。
 
 
かつて七つの海を制覇した大英帝国が、ヨーロッパの辺境の島国として生きていこうとしているのですから。
 
 
経済成長が縮小していく小さな島国、という点で日本とイギリスは似ているのかも。
 

消費社会から格差社会へ 1980年代からの変容

どんな本?
80年代あたりの日本の政治や経済の雰囲気がよくわかる本。読みやすい。

 
団塊の世代って、全世代の中でいちばん人数が多いからボリュームが大きいんですよね。
 
 
だから、会社は団塊の世代に売れるような商品を作るし、政治は団塊の世代が喜ぶような政策を打ちだす。
 
 
しかも、団塊の世代は高度経済成長期に青春を過ごしているので、「ほっとけば、社会はよくなっていく」と楽観的です。
 
 
それに比べて僕たち若者の世代は、人数的に少ないから、票を欲しがる政治家には無視されるし、生まれてこの方ずっと不況なので、「ほっとけば、社会はどんどん悪くなる」と悲観的です。
 
 
そりゃあ、団塊の世代と若者じゃあ話が合わんわけです。
 
 
僕らの時代の日本は、イケイケドンドンで右肩上がりに成長していた高度経済成長期の時代ではないのです。
 

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