村上春樹の作品は、いくつか映画化されています。
しかし、正直言って、
少なくとも、村上春樹の原作の人気に比べると、映画版はイマイチなことは確かでしょう。
最近、村上春樹作品の映画版を短期間にたくさん見たので、
村上春樹の映像化作品をいろいろ見てきたけど、やはり村上春樹の作品は映像化には向いてない気がする。
映像見てるより、文字を読んでる方が没入感が高いのよ、村上春樹は。 pic.twitter.com/4DZvSqUMZd
— タロン@英米文学 (@shin_taron) September 7, 2020
1.村上春樹作品の映画化がつまらなくなってしまう理由2つ
①村上春樹の小説のセリフは、実写では見るに耐えないから
村上春樹は、キザなセリフを書くことで有名です。
『風の歌を聴け』では、
いろんなことを考えながら50年生きるのは、はっきり言ってなにも考えずに5000年生きるよりはずっと疲れる。
──主人公がこんなセリフを言うのですが、これ、映画版でもそのまま使われています。
しかし、正直言って、映画の中のリアルな登場人物がこのセリフを吐くと、ぜんぜん「決まらない」のです。
小説の中で文字として読んでいる限りは自分の中で好きに脳内再生できるのでいいんですが、映画だとこんなセリフは白々しくてスベってしまうのです。
映画の製作者としては、村上春樹の原作のセリフをそのまま使いたかったのでしょう。
でも、悲しいことに、村上春樹の文章は小説の中でしか生きられないようで、実写映画版に移植するとたちまち死んでしまうのです。
個人的には、
村上春樹作品は、宿命的なまでに実写化には向いていないのです。
②村上春樹の非現実性を実写では表現できないから
村上春樹の小説は、基本的にリアリズムではありません。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『1Q84』のように、村上春樹の小説は、現実世界と思っていたら、いつの間にかありえない非現実的な世界に入っていた……という『不思議の国のアリス』的なストーリーが多いです。
この村上春樹の世界観を実写で表現するのは、かなりムズカシイですよね。だって、実写だもん。
たとえば、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』だと、東京の地下を探検し、「やみくろ」という謎の生物と遭遇しつつ大冒険するという非現実的な話ですが、これをCGで表現しようとすると、おそらくチープな映像になるでしょう。
2.村上春樹作品はアニメと相性がいいと思う
さて、村上春樹の実写化が失敗する理由を2つ紹介しました。
たしかに村上春樹作品は実写化には向いていませんが、
村上春樹の非現実的な世界観を表現するには、アニメはうってつけだと思います。
アニメは実写化とはちがって元々すべて虚構なので、キザなセリフを言ってもそれほど違和感はないし、異世界も表現しやすいでしょう。
アニメなら、今回紹介した「村上春樹の実写映画化が失敗する理由2つ」を克服できるのです。
あのアニメーション監督の新海誠も、「村上春樹の作品から影響を受けた」と語っていますし、村上春樹の作品とアニメは相性がいいのではないか……。
しかも、村上春樹と作風がやや似ている(と僕は思っている)森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』は、小説が原作ですが、アニメ映画化して大成功しています。
なぜ、村上春樹作品は、ぜんぜんアニメ化されないんでしょうか?
村上春樹本人がアニメに興味ないらしいので、アニメ化を許可してないのかもしれませんね。
もう村上春樹作品の実写化は諦めて、アニメ化に力を入れてほしいと僕は思うのですが……。
3.村上春樹作品の実写化おすすめ作品
村上春樹作品の実写映画化はほとんど失敗していますが、個人的には2つだけ良作があります。
それが、『バーニング 劇場版』と『ハナレイ・ベイ』です。
『バーニング 劇場版』は、村上春樹の「納屋を焼く」という短編が原作の韓国映画ですが、村上ワールドを良く再現できています。
最終的には映画オリジナルのストーリーになるのですが、村上春樹の夢幻的な世界の描かれ方がうまく、最後まで引き込まれました。
『ハナレイ・ベイ』は日本映画です。
サメに片足を食いちぎられて殺された息子の母を演じる吉田羊の演技が光っています。
これは、かなり原作の雰囲気を引き継いでいたので、良作と言えますね。
村上春樹の実写化には、他にも、
・神の子どもたちはみな踊る
・トニー滝谷
──などがありますが、残念ながら成功作はないです(ごめんなさい)。
現在、村上春樹作品のアニメ化ができていない以上、やはり村上春樹作品は小説で楽しむのが良さそうです。
・ちなみに、『映画をめぐる冒険』という村上春樹が書いた昔の本があるのですが、村上春樹が映画から受けた影響が書かれていておもしろいですよ。▼
コメント