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2022年読んでよかった本10冊

【書評】『吾輩は童貞(まだ)である 童貞について作家の語ること』|童貞は一刻も早く捨てよ

童貞も処女もへたに守ってこじらせると、ろくなことにならない。
 
 
処女信仰の強かった古い時代は終わったし、童貞なんてはなから価値がないから、現代は童貞も処女もさっさと捨てるべしだと本書を読んで俺は思った。
 
 
本書は、童貞について語る作家の文章を集めたアンソロジーだ。
 
 
収録作は以下の通り。

【収録作品】
・筒井康隆 「現代語裏辞典」
・平山夢明 「どんな女のオッパイでも、好きな時に好きなだけ自由に揉む方法」
・中島らも 「性の地動説」
・原田宗典 「夜を走るエッチ約一名」
・武者小路実篤 「お目出たき人(抄)」
・谷川俊太郎 「なんでもおまんこ」
・森鴎外 「青年(抄)」
・小谷野敦 「童貞放浪記」
・室生犀星 「童貞」
・中谷孝雄 「学生騒動」
・結城昌治 「童貞」
・開高健 「耳の物語(抄)」
・車谷長吉 「贋世捨人(抄)」
・穂村弘 「運命の分岐点」
・しんくわ 短歌
・寺井龍哉 短歌
・みうらじゅん 「東京アパートメントブルース」
・横尾忠則 「コブナ少年(抄)」
・澁澤龍彦 「体験嫌い」
・三島由紀夫 「童貞は一刻も早く捨てろ」
・川端康成 「月」
・バカリズムのオールナイトニッポンGOLD 「エロリズム論」

 

 
見事に全員が男性作家なので、女性作家から見た童貞観も読んでみたい。出版社さま、次はこの企画で本出しませんか。

 
 

今回は、おもしろかった文章を3つ紹介する。
 

タップできるもくじ

三島由紀夫 「童貞は一刻も早く捨てろ」

本書の最後の方に収録されてるけど、これは一番最初に読むべき。
 
 
「童貞は一刻も早く捨てろ」。タイトルがすべてを物語っている。
 
 

男の人生にとって大きな悲劇は、女性というものを誤解することである。
 
童貞を早く捨てれば捨てるほど、女性というものに関する誤解から、それだけ早く目覚めることができる。
 
男にとってはこれが、人生観の確立の第一歩であって、これをなおざりにして作られた人生観は、後半まで大きなユガミを残すのであります。

 
いや、ほんとその通り。
 
 
童貞は経験がないのをいいことに、女性を勝手に神格化、天使化してしまうから、実際の女性とどんどんかけ離れた女性像を作っていってしまう。
 
 
童貞はさっさと捨てるべきデバフなんだ。
 
 

以下、三島由紀夫が書いている、具体的な童貞喪失方法を紹介しよう。

  • 「処女に童貞をもらってもらうのはやめとけ」
    ➡︎その通り。
     
    童貞VS処女なんて、お互いルールを知らずにゲームするようなものだ。
     
    お互い探り探りでやっていくのもいいけど、お手本がいないからたどり着いた場所が正解かどうか分からない。

 

  • 「年齢が高い女性に童貞を捧げるべき」
  • ➡︎その通り。
     
    ただし、年齢が高くても性的経験の少ない女性ではダメなので、性的経験豊富な女性を相手にしよう。


 

  • 「童貞をてなずけて、男心をもてあそんで捨てる女性に引っかからないように注意しろ」
    ➡︎その通り。
     
    童貞は女性をピュアに信じすぎてるから、裏切られた時の悲しみは生涯引きずる。
     
    裏切らない女性を見つけた方がいいけど、童貞が女性の本性を見抜くのは無理なので、風俗店に行った方がいいと思うけど。

 
最後に、三島由紀夫はこう書いている。

かく言う私も、魅力が足りなかったせいかして、童貞を失ったのがすこぶるおそく、これが人生の一大痛恨事になっている。
 
自らかえりみて、それでもって得をしたということは、一つもなかったと思っています。

 

あの三島由紀夫も童貞喪失は遅かったらしい。


 
ノーベル文学賞をとるかと言われるほどの天才作家、三島由紀夫がこう言ってるんだから、もう「童貞は一刻も早く捨てろ」はやっぱり真実なんだろう。
 
 

平山夢明 「どんな女のオッパイでも、好きな時に好きなだけ自由に揉む方法」

これは笑った。
 
 
男たちが高速道路で車に乗って、好きな女性の写真を見ながら、窓の外に手を出すという話。
 

どういうこと?

つまり、こういうこと。
 

彼は手のひらに当たる空気抵抗を、ボインの感覚に脳内変換させていたのです。

 
空気抵抗をボインの感覚になぞらえて感じることで欲求を満たさざるを得ないところに、童貞の悲哀がある。
 

車をカッ飛ばしながら左手にハンドルの感覚、右手にボインの感覚を楽しんでみよう。

あと、たぶん、手に感じる空気抵抗と実際におっぱい揉んだ時の感覚はぜんぜん違うと思う。

武者小路実篤 「お目出たき人(抄)」

武者小路実篤は実は、日本文学史の中で、

「モテない男」として有名なんだ。

 

日本文学史に輝く非モテ男、武者小路実篤。


特に、彼の小説『友情』は、非モテ小説として有名らしい。
(読んだことないけど)

 
 
本書に収録されてるのは、 「お目出たき人」という武者小路実篤の短編小説なんだけど、
 
もうこれが、モテない男の典型すぎて読んでてきつい。
 

あらすじはかんたんで、主人公の男が近所に住む鶴(つる)という若い女に、一言もしゃべったことないのに恋をするという話。
 
 

自分はその時分から、鶴と夫婦になりたく思うようになった。

━━いやいやいきなり夫婦は早い早い。まだ話したこともないのに。
 
まずは知人➡︎友人と小ステップを踏んでいけ。
飛躍した場所にゴールポストを置いてしまうところが、童貞の悪い癖だ。
 
 
 

翌年の春に、父を承知させ、その夏間に人をたてて鶴の自宅に求婚してもらうことになった。

 
 
━━待て待て。父を巻き込むのも早すぎるし、代理人に彼女の家に求婚に行かせるな。
 
 
現場に行かずに事件を解決する探偵のことを「安楽椅子探偵」というけど、彼女の家に行かずに結婚しようとする彼は「安楽椅子童貞」と言えるかもしれない。
 
 

だから一年近く鶴に会わないでも鶴を恋している。会わないためにか鶴はますます自分の理想に近づいてきた。

━━こわい怖い。
一言も話してないのに、彼女が自分の理想に近づいてきてるって、それ完全に脳内世界の話だから。
 

自分は天災で若死にするような気がする。
これも空想だろうと思うが、自分は雷か、隕石にうたれて死ぬような気がする。

━━1994年〜2003年にかけての日本の落雷での死亡者は30人ほどしかいないし、直接隕石が当たってなくなる確率は宝くじの1等に当たるより低いとも言われてる。
 
 
日本だと地震とか台風で死ぬ確率の方がよっぽど高いと思うけど、童貞は違うんだろうか。
 

道ゆく人より自分の方が一段と偉いような気がする。

━━童貞なのになんでそんなに自信家なんだよ。
 

 
という感じで、非モテ童貞要素のオンパレードで、恋愛小説というかストーカー小説だ。
 
 
でも、立場を入れ替えてみれば、処女もこんな感じなのかもしれない。
 
 
一言もしゃべったことのない憧れの男性を、ひたすら妄想で育むというパターンは処女にもありそう。
 
 
男も女もこじらせると恋愛観が歪むから、童貞も処女も一刻も早く捨てた方がいい。
 
 

童貞をこじらせるとおかしくなる

改めて童貞をこじらせた作家たちの文章を集めた本書を読んでみたけど、

みんな頭おかしくなってる。

やっぱり童貞はこじらせると、気が狂うに違いない。
 
 
ちなみに、本書の最後に収録されている川端康成の 「月」という短編小説では、童貞をこじらせた主人公が月に童貞をあげようとする話なんだけど、あの川端康成も頭おかしくなってる。
 
 
やっぱり三島由紀夫の「童貞は一刻も早く捨てよ」という言葉は正しい。

 

 

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